***オルゴール・メドレー***
かなり勘違いな話だが
この人の近くにいると自分も綺麗になってる気がする

オルゴール・メドレー


ちゃん、元気?」
「いやあの、私先週遊びに行ったじゃ無いですか」
「冗談冗談!あのね、今週末に私コンサートに出るんだけど、
良かったら見に来ない?確かクラシック好きって言ってた気がして。」
笑顔も綺麗だなぁ…

「あ、そうなんです。好きですよ」
「じゃああの小生意気な弟巻き込んで全然えぇから遊びに来てね!」
「了解です!」
お姉さんの言う事なら多分聞くよね

そう言ってチケットを二枚渡した後
サラサラの髪を靡かせながら去って行く綺麗なお姉さん…

そう、お姉さん。


「いやぁ〜いつ見ても綺麗だなぁ」
「せやなぁ〜!」
「謙…いつの間に?」
「金ちゃんとお菓子買いに行った帰りや〜!グッドタイミングやな」
「で、金ちゃんは?」
「何言うてん、背中におぶさ…って、居らん!!あれ!?」


「おい、そこの男子二人」

「男子二…二人!?」
「あはは! 男言われてんで!!」

買い物袋から若干顔を出していたプリングルスを取り上げて頭を叩く

パコン!

「笑うな!」
「いっ…!!スピードで負けるなんて…!」


「あ、金ちゃん」

視界に入って来たのは金ちゃんと蔵ノ介。

「姉貴の奴、学校来るな言うとるのに…」

うわ、ちょっと不機嫌そう

「クラシックコンサートのチケット貰っちゃった〜…二枚」

極力愛想良く会話する
「口角引き攣ってんで…クラシック眠いんやもん」

愛想笑い終了早っ!
「良いじゃ〜ん。行こ〜よ〜」
愛想笑いが儚く終了してしまった為
今度は少し駄々を捏ねてみる

謙也と蔵ノ介が同時に口を開き、一言。
気持ち悪いで」
「ハモられた!?」
やはりとは思ってたけどダメですか…

「あ、せやったらその後買い物付き合うてや」
「うん、私で良いなら」


どんな交換条件だよ、それ…

xxx

クラシックを聴く上で
一つ悔しいと思うことがある

それは好きな音楽に対して「
眠い」と言われることではない。



演奏が終わった時に
「途中のソロパートで微妙に音外しとったよな」
「…うん」
何故気付く!?

いや、私は昔からクラシック聴いてたりしたから何となく気付けるけど

「蔵ノ介ってクラシック聴かないんだよね?」
「せやなぁ…姉貴と妹が弾いとるのが自然に入って来る位かな。
改まって聴いたことは無いけどコンサートとかは連れて来られたな」
「良いなぁ、何か自然に絶対音感身についたって感じで…ムカつく」

「羨んどるのか怨んどるのかどっちかにしてや。
ま、その代わり楽譜とかあんま読めへんけどな」

ちょっと勝った気分
「あ、お姉さん!!キャ〜やっば綺麗ー」

「せか?」
「普段一緒にいるから麻痺してんだよもう〜!あんなに綺麗なのに…!」
自分もあんなに輝くことが出来たら人生楽しいんだろうな…

毎日が薔薇色!…みたいな

「…何無言でニヤけとんねん」
「マジで!?顔に出てた?!」
「もろな」


呆れ顔で返答される

まぁ…薔薇色で言えば蔵ノ介も毎日がハーレムだもんなぁ…

「ん?」
「あ、何でも無い」


ダメだダメだ

せっかく見に来てるんだから音楽に集中しないと



xxx
三分後


静寂感の中にも壮大なスケールを感じさせる第二楽章の後半


突然右肩が重くなった

まさかお化…


チラリと右下に視線をやると何やら黄色い物体が…!?って、


「…zzz」


ちょっと蔵ノ介!
ここ私一番好きなフレーズなのに寝るなよ…!


「はぁ…」


溜め息を吐きながら右に頭を傾けて蔵ノ介の頭の上に乗せた




その後ところどころにシンバルとか派手めな音が入るものの
結局起きたのは第三楽章終了後の拍手音
つまり最後まで寝てたってことだ



「ん…」
パチパチ

「て、適応力早いな…」




"本日の公演は終了致しました…"


「やっぱ眠いわ〜」
欠伸をしながら控え室に向かう
「蔵ノ介が寝てたとこ、一番良かったんだけどな」

「拗ねとる」
「別に…拗ねて無いけど」
聴いて欲しかったんだよなぁ。
何かこう、自然の凄さって言うか…

「第二楽章のテーマは自然の持つ優しさと壮大さ…
その事を人類に忘れないで欲しいと言う願い」
「そう!自然が…」
さっきから自然自然うるさいな自分


えっ

「パンフレットに書いてた?それ…」

鞄にしまったパンフレットを開いて曲解説の欄を読みながら歩く


「聴いとったよ」
「はい?」

「自分が好きな相手が気に入ってるフレーズ、寝るわけないやん」

「いやいや、私見たよ?!バリバリ寝てたじゃん!!」

「第三楽章の最後だけやで、
の肩寄り掛かっとったら気持ち良くなってきてなぁ」

「じゃあ…寄り掛かってきたのわざとってこと?」
一瞬間を置いて笑いながら頷く

「せやな、寝とったら受け入れ易いかなぁ思て」

「別に寝てなくても肩くらい貸すのに」
「せやったらこれから頻繁に借りるわ」
「肩凝るから平等にね!?」

「あはは、ばばぁやん!どないな理由やねんそれ」


「やっぱり二人だったか。ホンマに仲えぇんやね、羨しい〜」

「よう言うわ」
「お姉さん!すっごい素敵でした!!演奏も全部!」

「満足して貰えたみたいで嬉しいわ、ありがとう!」

「姉貴一回間違えたやろ」
「う…蔵気付いたん?」
「何回も練習の時に間違っとったから」
「ね、こういうトコ生意気やろ?」
「止めやー!」

頭をわしゃわしゃしながら同意を求められる
あんなこと出来ないな
「生意気です」

しまった!思わず本音が…!


お前後で…」
ちゃんいじめたらあかんよ!」

「関係無いやろ!」
「えぇ〜…」
後で何!?


「あ、呼ばれてるみたい。それじゃあ…またね」

「えっ…!」
待って下さいお姉さん!
このタイミングで居なくなられると心細いです私…


「…」




やだなぁこの沈黙


しかし先に沈黙を書き消したのは蔵ノ介の方だった

「さてと、買い物行こか」
「う、うん」


さっきの冗談だったのかな


「何買いたいの?」
「姉貴の誕生日プレゼント」
「へぇ〜。それで私を呼んだ訳だ」

普段はあんな生意気なのに意外にお姉さん想いなんじゃん

「人の顔見て何ニヤけとんねん」

「うわ、また顔に出てた!?私正直者だからなぁ…」
「えらいプラス思考やな…」


不意に足が止まる

「?」

目の先を見据えると…

「あれ、白石妹と…千歳の妹?」


二人は仲良く横断歩道を渡ってこちら側に向かって来る


「ヤバ…隠れんで!」
「はぁ!?何でまた…」

路地裏に入って二人が通り過ぎるのを見過ごす

関係ないけど意識し始めると緊張して来た

近いっていうよりもう抱き締められてませんか、この状態

でも蔵ノ介平常心だ、さっきから心拍数が上がる気配無いし…

ちょっとはドキドキしたりしないのかなぁ。…私はかなりしてるって言うのに


「よし、撒いた」

「ね、何で隠れたの?」

「いやぁ何でかミユキに気に入られててん、俺。
せやから彼女なんて連れてた日にはもう…」

「そりゃあそんな人柄だったら好かれるよ。
…で、彼女がこんなに近くに居るって言うのにドキドキしないんだよねぇ
…ポーカーフェイスは表面だけにしておいて欲しいよ」


「あぁ!!スマン…必死で気付いとらんかった」

「えぇっ!?」
そんな!まさかの天然オチ?!


「気付いても変わんないけどね、心拍数」

かて変わって無いやん」
「いや、私元々気付いてたからだし!
普段からこんな心臓バックバクだったら死んじゃうでしょ!?
良いから早く出ようよ」

しかしこの路地裏、かなりギリギリな為
先に入ってしまった私は
蔵ノ介が出てくれないと一生出られ無い

「よう喋んな」
「他の事で紛らわせたくてね、ほら早く出た出た」














「なぁ、聞いとる ?」
「…聞いてるよ。甘い誘惑が…」
「誘惑?何言っとんねん」
「だってまさかあと一歩で出れるって時に
わざわざ引き返して…唇を奪われるとは」
あっついな…何で今日こんな暑いんだろうなぁ

「せやけど」
「あー!ほら、楽器屋さん!!楽譜なんてどう!?」
スルーかい
「楽譜大体持っとるからなぁ」
「じゃああのお店寄ってみる?」
「せやな。お礼も言いたいし」

あの店とは。
前に蔵ノ介から携帯ストラップを貰った時
私もそのお返しに…と寄ったお店のことで。
しかもそのお店、一風変わっていて
買った物に不思議な力が付いて来ると言う
何とも素敵なお店なのだ
(・・・幸せの黒い猫より)


カランコロン

「おや、久しぶりに見る顔だね…」
「お爺さんのお陰でどうにか仲良くやってます」
「ほっほっほ、なぁに、仲が良いのは波長の問題じゃよ・・・」
「先日は、有難う御座いました。」
「こちらこそね、うちのミーを届けてくれて…」
「今日は、この人のお姉さんに合いそうなプレゼントを探しに来てて。
クラシックが好きなんですけど何か良さそうなプレゼントありませんかね?」

「ふむ、クラシック…」


お爺さんは店内をぐるっと一回りしながら
小さなオルゴールを手に取り、蔵ノ介に手渡した

「オルゴール…ですか?」
「そうじゃ、開けてみなさい」


箱を開けると、そこからは聞いたことのある曲が流れ
2匹の黒猫がくるくると曲に合わせて踊っていた

「良いな、これ私も欲しい…」
「お兄さん、一度閉めてもう一度開けてみなさい」
「は、はぁ」


どうせ開け直したって同じことが起きる―
普通のオルゴールはそうだ。

なのに


このオルゴールときたら…


「…有り得へん」
「き、曲が…違う」

お爺さんはニコリと笑いながら説明を始めた
「このオルゴールは、気分屋でのう。
嫌いな人には何度開いても同じ曲、
気に入った人には開く度に違う曲を聴かせてくれる

不思議なオルゴールなんじゃ…」


「けど、俺達何で気に入られたんやろ?基準て…」
「さぁ…オルゴールに聞いてみないと分からないが…
お兄さんが気に入られたと言うことは、お姉さんも大丈夫じゃよ」



そんなお爺さんの一言に後押しされて
結局プレゼントはこのオルゴールに決定した




「不思議なお店だよね」
「夢みたいなオルゴールやな、まさに」












xxx
数日後



「おはよう、蔵ノ介」
「おはよ」
「あのプレゼントどうだった?」
「それがな、開いたままメドレーになんねん。
あのオルゴール、相当姉貴の事気に入ったんやろな」
「あはは、男なのかなぁ?」
「そうかもな」



今度遊びに行ったら何が入荷されてるかな?

END




>>>コメ。<<<
白石の妹と、千歳の妹は仲が良いイメージ。
出てきたお店は幸せの黒い猫って話で出て来たお店です。
意外なところで繋がりが。(何



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