***青空海月***
初めて気付いたんじゃない?
君は意外に寂しがり屋で
僕も寂しがり屋だってことに


青空海月


午後八時半、
一通のメールが届く


「今、大丈夫?」

シンプルすぎる一文
でも私にはそれが嬉しかった


『大丈夫だけど、どうかした?』


二分後、携帯が鳴る


「急用?」
「いや…急用と言えば急用かも」

なんだろ


「実は明日から一週間、
検査入院することになっとって一旦実家に戻るばいね」
「…えぇ?急過ぎるよ!」

「すまん… の顔見とったらなかなか言えんで」

「一週間で帰って来るんだよね?」
「多分…何もなければ」

「分かった、待ってる」


それにしても急過ぎる

心の準備なんて出来ないまま
私はただただ電話で千里を送り出すことしか出来なかった



xxx

あれから三日が経過した

元々そこまでベターッとしてないと無理とか言う仲でも無いし
まぁ、自分の中ではこの生活も普通だ


「なぁー ちょっと聞いてや俺の悩み!」
「えー?どうせ下らないことでしょ?」
「ほら、白石とか千歳はモテるやろ?」
「…うーん、多分」

「流れ弾とか来てもおかしくないやろ!?
せやのに俺何故か小春にだけ好かれんねん!!」

熱弁する流れ弾で良いから欲しいという謙也
「…女子にも人気だけど、小春いてなかなか言えないみたいだよ?みんな…」
「何やて?!ホンマかいなそれ!!」
「うん、女子の会話を聞いてる限りは。」

「あ、ありえへん…!」

頭を抱えて机の上に顔を乗せながら落胆して行く姿には流石に同情する

「はいはい、凹まないの」

頭を撫でながら慰める
と、突然頭が上がった

「せや、今日カラオケ行こうや!慰め会」
「カラオケ?でも」

「決まり!じゃ、俺メンバー集めるからまた後でなー!」
「ちょっと…謙也!?」

あーぁ行ってしまったよ…

流石は浪速のスピードスター…って、違うか。褒めるとこじゃないな



xxx


「え!女子私だけ?」

「何言うてんねん、ここにもおるやろ」
自信満々でキラキラ光るデコ携帯を持ち、
誰かにメールを打っている…小春

「謙也…趣旨忘れたの?バカじゃないの?」
「俺もそうやと思います」
「ちょ、待ちぃや!そこの二人!」


「何歌おうかな〜」

リモコンをいじりながら曲を探していたのだが…


は冊子!流行の最先端に居るあたしがリモコン」

リモコンと冊子を擦り替えられる

…このやろう!


「しかも謙也クンと蔵リンの間は誰が座るか決まってんねん!
ほら、しっしっ」

「小春は俺の隣りやろ!?こはるぅ〜!」
「もー…別に誰の隣りでも良いけどさぁ」

机とイスの間をすり抜けてお姫様(自称)と替わる

とりあえず銀さんの隣りが空いていたので座ることにした


が、ここでイケない物を目にする


「コラませガキ!」

取り上げたメニュー表はアルコールドリンクが載っていた

「嫌やわぁ、参考ですよ参考」

「何のだ!」

計画変更。
しばらく光を見張ることにした


「えー、今日は俺のためにホンマにありがとうみんな!!」

マイクを持っていきなり仕切り始める言い出しっぺの謙也

…無理矢理連れて来たくせに


「ほな歌います!」


そう言うと意気揚々と歌い始めた


「もっと女子誘ったら絶対モテるのにね〜?」
「謙也さん不器用過ぎますわ」

「白石とか銀さんとかも歌めっちゃ上手いのに
何で女子とカラオケ行かないんだろ?」

「… さんは何者なんすか」
「いや、私はマネージャーって立場だしさ!か弱い女の子…」
「あ、次俺っすわ〜」


は、鼻で笑われた…凹む。


「光も歌上手いなぁ…」
これは惚れるよなぁ…ライブ来たみたいだもん

はん…千歳はんが居ると言うのにまさか…」
「いや、違う違う!大体あの財前君が私に惚れるわけがない」


「どやろ?」


「…」

…恐っ!幻聴か?!幻聴なのか今のは!?


「うちの部ってさ、癖はあるけどカッコ良い人多いよね」

「まさか酔っとるんや…」
「酔ってないし!何かこう見渡すとさぁ…
勿論銀さんも硬派で好きだよ、私」


「むぅ…」
この銀、漢として仲間の女子に恋心を抱くようなことは断じて…!

「哀れやな…」
「え!?」
「いや、何でもあらへん」

「っていうか小春…」
アイドルの歌をフリ付きで歌っている

光の後にアイドル聴くとなんかなぁ…
それ以前に小春がネックだ

「多ジャンルでいいのか…な」



「あ、はいはい」
「うるさいの居なくなったからこっち来てや〜!
俺の愚痴聞いてぇやー!」


白石と謙也の間にぽっかりと空いた席

「良いけどこれ歌ったら戻って来るよ?」
「そん時はそん時〜!」

髪の明るい人達の間に割り込んだ

「千歳は大丈夫そうなん?」
白石が冊子を捲りながら問い掛けた

目線は冊子に向いているままだ

「それが連絡無いからなんとも…」
「そっか」

白石との会話はそれっきりで
謙也の愚痴を聞いていたらあっという間に一曲が終わってしまった

「退きや、
たまには逆らってみようかな
「…やーだ」
白石の腕を組みながら拒否ってみる。
「せやったら俺もー」
その上、珍しく悪ノリに便乗して腕を組み直してくれた


「きぃー!」


しかし奇声と共に無理矢理引き離される


まぁ、当然か



「喧嘩売ってもどーせ負けるんですから、大人しゅうしとればえぇのに」

元居た位置に戻ると光に耳打ちされた


「はい…すんません財前君」

「千歳さんに見られたら拗ねますよ」

「あはは、そんなことないって!」
「…鈍感や」


こうして、良く分からないカラオケパーティは
既に三時間を経過しようとしていた。

「…なぁ」
「んー?」
「謙也、 のこと好きやろ」
唐突に質問を投げかける
「……はぁ!?そ、そんな有り得へんやろ!!
いきなり何言うてんねん白石はー!!」
突然の質問を必死に否定する謙也
「謙也クン、動揺し過ぎやで?」
「ちょっ、待ちぃや!小春まで何やねんー!」
「相手は千歳の彼女やぞ?諦めた方が身の為やて」
「せやでー?あたしがおるやんかーー!
より何百倍も可愛ぇんやでー??」
「もー、話進み過ぎやて!!俺から一言も言うとらんやんか!」

xxx

「あははは!光の待ち受け恐〜っ!」
そこには死神のような、悪魔のような絵が。
「うっさいですわ、人の携帯勝手に取らんで下さい」
「銀さん見て見てこれ!」
「…財前はん、これグロテスク過ぎやろ」
「師範まで…」

ペチッ

「あいたー!」
悪ふざけが過ぎてしまい手を叩かれた
「自業自得です」
「光冷たいー」
「酔っ払っとるんですか?って、くすぐらんといて下さいって」
「あ、弱いんだ?えいえい」
さん!」

「そこー!いちゃ付き過ぎやて!!」

「…?」
何故か怒る謙也に意味が分からない二人


「…好きやな」
「好きなんや…ショックやぁ!」


それを聞こえたのか無意識なのか
どちらにしろ先輩の意見を逆手に取る子悪魔、財前

「何ですか一体」
肩に手を乗せながら明らかに挑発してみる

「あー!!!」
「うっさいわ謙也!」
「す、すいません…」
気持ち良く歌っていたユージに怒られる始末


「どうしたんだろうね」
「さぁ。妬いたんとちゃいますか」
「え?誰にー?」
「…ホンマ鈍っ」



結局、誰に妬いていたのか、慰められたのか
良く分からないままカラオケパーティーは幕を閉じた。




xxx




「あ、もしもし千里?ごめんね、今電話大丈夫?」
「よかよ、どげんしたと?」


カラオケから帰った後、
とりあえず今日起こった話を端的にすることにした
「楽しそうばいね、良いなぁ。」
「帰ってきたら一緒に行けるよ」
「って言うより、謙也がなぁ…」
やれやれ、どこでもライバルは付き物なんかな

「何?」
「ううん、何でもなか」
「で、検査結果は…?」
「明日出るって」
「そっか。知りたいような知りたくないような…」
「他に何か言いたいことは?」
「えっ」
「何となく、他に言いたそうな気がしたとね」

この人何で声だけで分かるんだろう?
「…えっと。元々私達ってラブラブーって感じの関係ではないし
なろうとも思ってないんだけどね、けど」







会いたいなーって、何で思っちゃうんだろうね










若干の間の後に話し始めた相手は冷静だった


「遠距離恋愛してる人だっておるたいね」
「そうだよね、たかが1週間で何弱音吐いてるんだろうな」
「ばってん…」






どうやら俺も遠距離は向いてなか。



「…え?」


「早く会いたかね」





まさかのどんでん返し。
優しいけどしっかりとした声色

この声に今まで何度救われたことか。

自分の方が辛い立場に居るのに
何でこんなにも強いんだろう

「ごめんね、私の方が励まさないといけないのに。
逆に励まされちゃってる」
「全然。むしろ が寂しいって聞けただけで少し安心した。
俺が居らんくても平然としてたら凹んでたかも」
「そんな飾らない千里が好きです」
「ははっ…俺も好き。」


最後に返された”好き”の言葉が
電話を切っても暫く頭をループしていた


あと四日。
無事に終わることを祈って。



END


>>>コメ。<<<
逆ハー風味のギャグ風味の甘々風味の…(風味多っ
色々詰めちゃった千歳夢です(最終的には…!
何か…まだ続けたい終わり方しちゃった(どんな終わり方ですか
カラオケ行きたいー(知りません



>>>モドル<<<
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