***チルサクラサク。***
毎年この季節になると妙に慌しくなる


チルサクラサク。



入学式

俺にとっては面倒なイベントや…

今年は平和に終わればえぇなぁとか懇願したいところやけど


「無理やん」


「白石先輩と一緒になれて、めっちゃ嬉しいです!」

「先輩彼女とか居るんですか!?」

質問責めってこういうこと言うんやろな


「白石、そろそろ始業時間やで」

「キャー!あの先輩誰?!」
「私イケる気がする」

「そうそう、白石と比較したら俺の方がお手頃…って、何言うてんねん!!」

「ノリツッコミやー!」



一年にもからかわれる謙也


「コラ、早うクラス戻りなさい!」
「…はぁ〜い」


ナイスタイミング!
二年の時学年主任やった先生や

「ほら、白石達も」
「はいはい」

戻りたいけど戻れなかったんやて。


「去年も見とったけど白石ホンマ人気やなぁ〜」
「…別に、そない言われても嬉しくないで」
溜め息を吐かずにはいられなかった


xxx

「蔵リン、一年女子の間で話題持ち切りやて」
「ふーん…」
「ふーんて!まったりしとってえぇの!?」
「だって、下手に動いても大変になるだけでしょ?
それより小春、また携帯の模様替えたの?」

「まぁなぁ〜♪春やし桜にしてみました★」
キラキラ光るラインストーンで描かれた水色の背景にピンクの桜の花びら

「可愛い〜、ねぇねぇ今度教えてよ」
「まぁ、なら頼まれてもえぇかなぁ〜」
「マジで?!めっちゃ楽しみ!」


は普段女子を好まない小春に何故か好かれていた

どちらかと言えば数人の友達とグループを作ってどうと言うよりは、
どこか孤立することを選ぶタイプだ。
浅く広く、気取ることもなく特に敵も作らない一番平和な立場だろう。


「あ、今日華月でライブやった!あとでユウ君とネタ合わせせな!」
「今日!?また派手に目立っちゃうね」
「勿論来るやろ?!」
「あはは、楽しみにしてるよ」

「蔵リンも誘っておくわね!」
「あ、ちょっと…」


言う間もなく早業でメールを送信されてしまった

「忙しいんじゃないの?」
「どうやろ〜?」

明らかからかわれてると分かって居ながらも内心ちょっと嬉しかった

xxx


「あ、小春からメール」


SHRの時間中、絵文字やら顔文字が大量に入ったメールが届いた


"蔵リンおはようさぁん!(UεU*)
今日華月でライブすんねんけど、
勿論来るわよね!?来なかったらあたし泣いちゃう↓↓(ノ_<。)
は即答やったで!ほな、またあとでっ★★★"


も行くんや




"朝から何や疲れるメールおーきに。
ちゅーか部活の説明あるやろ、まさか忘れてへんよな?
それ終わってからなら行こかなぁ。の顔見たいし。
って言うても怒らんといてな"


「…」
あぁぁ!あたしとしたことが部活説明会すっかり忘れとった…!!!


…」
「え?何悄気てんの」
「部活説明会あった今日…」

「えー!?忘れてたの!?」
「そ、それからやんねん!今日は早めに終わらせる!!」

「そこ、静かに!」

「あ…」



xxx


「あーぁ、サボりたい」
「白石が?よっぽどイヤやねんな」
「まぁな…」

疲れる事は極力避けたい

って、誰もが思う事やろ?


在校生側に座りながらふと考える



どう返答すると楽か

彼女居るって素直に言うべきか?

…それはあかんやろ



そんなことをダラダラと考えて居る合間に式は終盤を向かえていた


いっそ抜け出したい


教室に戻る廊下ですれ違う度同じような質問を投げ掛けられて

自分は
『すまんな』としか言えなくて
…ちゅーか言い様が無くて

デジャヴに陥りながらどうにか教室着いたかと思えば…

「白石君大変やねぇ〜」
「でも一年の気持ち分かるわぁ〜」
「勘弁してぇなぁ…」
女子にからかわれる始末



ふと携帯を見ると新着メール…って、小春やったら面倒やな…

"モテる男も辛いね〜…
なんて、冗談だけど(笑)
あ、冗談でもないのか。
愚痴なら帰ってからゆっくり聞いてあげるから
逃げ出したいとか言っちゃダメだよ〜"


「…」


"ホンマ疲れたわ…はよ帰りたいって思っててんけど、
部長として仕事は最後までせなあかんよな。おーきに。"



相当疲れてんじゃん、蔵ノ介

大丈夫かな




xxx
「マネージャー希望で!」

「きぃぃ!女子はあかんの!!」
「せや!小春だけで十分や!!」

「あんなぁ…一応マネ居るやろ?」


純粋にテニスが好きな子

これを見極めるんがかなりの大仕事や。

去年なんてアミダで決めようとしとったからな…オサムちゃん

「とりあえず今のマネから説明あるから、それ聞いてな」
「えー!?白石先輩来ないんですか?」
「うちのテニス部は一応実績あるからな、
説明聞いて出来そうやないと入れられへんねん、堪忍な」


そう言うと大体半数は帰る

「今年千歳来るらしいし、部活体勢整えとかんと。」
「え!千歳って、九州二強の?」
「せやせや」

「俺の位置は!?白石、見捨てんといてな!?」
「そない慌てんでも…副部長なんやからもっと自信持ちぃや」
「…せやな。せやなぁ!!」


小石川のテンションて一体…


「マネの説明終わるまでちょっと華月行って来るわ。こっちの説明頼んだ」
「え、ずるっ!」

「小春に来い言われとんねん、頼んだで副部長」

「小春?さっきまでそこに…っていぃひん!!あ、白石ちょ待ちぃや!!」



xxx
「ユウ君、新入生どうやったぁ?」
「せやなぁ、やっぱり小春がミス四天宝寺やで〜!」
「やっぱり?見た目はクールビューティ、
中身はお茶目小春ちゃんですどぉも〜!」
「って、見た目どう見ても高校球児やん!!」
「そうそう、勿論阪神にプロ入り…ってコラー!!」



結構お客さん入るんだよねぇ…

来るのが遅く、後ろで立ち見しながら漫才を見る

暗いし、蔵ノ介来ても分かんないだろうな…


「…ん?」

突然握られる手


「見つけた」

「…蔵ノ介?」
「そうやなかったら誰やねん」

「いや、っていうかこんな暗いのに良く見つけられたね」
「何となく、こっちにいるんやないかと思ってな」


「説明会は?」
「抜けて来た」
「…部長が!?」
「すぐ戻るけどな。の顔どんなやったかなぁって気になって。」

「あはは、何それ?まぁ、お疲れ様です」

握られた手を強く握り返す

…後で邪魔してもえぇ?」
様子を伺うかのようななんとも自信の無さそうな一言

「お茶菓子くらい用意して待ってるよ」


「はは、楽しみにしとるわ…ほなまたあとで」
「来たばっかじゃん、もう行くの?」
「何やが隣りに居られると抱き締めたくなる衝動に駆られてしもてなぁ
…暗いし、ココ」

おっと、マジですか
「じ、じゃあ離れなきゃまずいね」

急いで離される手

「どもっとる」
「どもるだろ!」

「ははっ、またな」


頭を軽く叩いて部室に戻る

これやったらトンボ返り状態や



「えぇっ?!白石戻るんはやない!?」
「いや、なんちゅーか…俺がもし犬やったとしたら」
「は?しかも唐突に何の話やねん!?」
「…何でもあらへん」
「聞くってー!
この小石川健二郎、悩み相談は24時間受付中…
て、またいぃひん!!白石!」


「待ての出来ない犬、ですか」
「…みたいなモンやなぁて。自分で思た」
「白石さんらしいすわ、せやったら俺は
…言う事聞かん嫌なタイプなんやろなぁと思いますわ。
逆に見せ付ければえぇのに」
「見せ付けたらが大変になるやろ、めっちゃ辛いわ」
「まぁ…同じ学校通ってるのに一緒に過ごせんのは辛いですね」

「白石、説明終わったで〜」

マネージャーの一言で現実に戻される

「あ、おおきに。今行くわ」

xxx


「蔵リン来とった!?」
「うん、来てたよ。忙しそうにしてたけど」
「説明会終わったんかなぁ〜」
「どうなんだろうね、一応行ってみれば?」
「せやな、ユウ君行くで!」
「おう、行こう行こう!」


さて、帰ろうかな


xxx


「あの、白石先輩」
「ん?」

マネージャーからの説明会が終わって
それでもまだ残っていた一年の中には
質問しないと気持ちが収まらん子も居るみたいで。

「先輩、本当に彼女居ないんですか?」
「…何で?」
「そのー…そんなにカッコ良いのに居ないのも・・・」
「どう思うかは各々の自由…ってことでえぇかな?」

そっと微笑みながら諭すように告げる
笑いで誤魔化す…なんて、かなり無理な方法やけど

「分かりました、有難う御座います!さようなら!!」
「気ぃ付けてな」

不器用な言い訳やな


xxx


「お茶菓子…何が良いかな」
マズい、お茶菓子とか言って家に何もない…!
お母さんは買い物で出ちゃってるし…


「仕方がない、コンビニまでひとっ走り…」




『!』


「危な、ドアにぶつかるとこやったで」
「ご、ゴメン!いや、お菓子無くてコンビニに行こうと…!
上がってて良いよ、今誰も居ないから留守番になっちゃうけど」
家に住んでる人が居ない留守番って一体…

玄関の中にとりあえず案内する

「わ!どうした!?」

まさか玄関で抱き締められるなんて
…予想外と言うか恥ずかしいです

「全く…待てが長過ぎんねん」
「待て?って言うか…ここ玄関!!まだ待て!」
「嫌や」
「なっ、何てワガママな犬…!」
「離しとう無い」
「だから部屋でゆっくり聞くから!」

聞く耳持ってくれない蔵ノ介を必死に離して
部屋に連れ込んだ

ヤバい、機嫌悪くなってる
一体今日一日、どんだけ辛い思いを隠して来たんだろう
”怒った?”なんて、聞いたら逆効果だろうし

私が蔵ノ介の立場だったらどうして欲しい?





とりあえず横に座って黙って頭を撫でてみる

「…」

向こうも前を向いたまま黙っている。
ただ、ちょっと頭傾けてくれてる…のかな?


キス…とかしてみようか?


「…」


まだ黙ったまま動かない。
それにしても機嫌が悪いくせに
こういうことは拒否らないんだ…掴めないぞ白石犬。
いや、くらのすけん…上手い。

「蔵ノ介、もう待てしなくて良いんだよ〜?」

あ、やっと口聞いてくれた
「好きやから」

「え?う、うん。私も好きだよ」

言葉なんていらないのかな


なんてこの空間体験しちゃったらそう思い込んでしまう。







「機嫌悪いでしょ」
「せやな、めっちゃ悪いで」

恐い!
隠されるのも嫌だけど直球に言われるのは更に恐い


「一日中ずっと
正解を言えない答え言い続けてたんやから…な」
この現実からは逃げられないんや
夢なら覚めて欲しい、なんて思うけど無理な話で。

「何か良い方法はないのかな?」
「いや、解決策が見つからん今は
が傍に居ってくれるだけでえぇよ」
「そ、それだけで良いの?」
「あとはどうにか…極力忘れる。」
「えぇ!?それちょっと寂しいよ蔵リン!」
「小春みたいな言い方すなやー」
まぁ…実際忘れられへんけどな




xxx
それから数ヶ月後…
四天宝寺中の女子の間ではこんな噂が流れ始めていた


「九州から?」
「何かテニスがめっちゃ強い三年生が来るとか」
「えー、マッチョとかじゃない?」


「千歳千里です、よろしく。」


「…」

3年1組に入った九州から来た転校生が
話題になるのは時間の問題らしい。


「千歳に話題移ったらのこと言ってもえぇかな」
「いや…私はダメな気がする」


END


>>>コメ。<<<
入学シーズンだったので。ふと書きたくなりました。
白石の夢は書き始めると何故かストーリーが長くなります
書いてる途中であれもこれもってなるダメダメさ(…



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