***ウイルスと特効薬***
…風邪引いちゃったなぁ。
大事な時期に部員に迷惑をかけるなんて絶対出来ない―
その結果、大きなマスクは必需品となる。

ウイルスと特効薬

朝練前、部室前廊下にて

「あ、金ちゃんおはよ」
「おはようさぁ…ギャー!口裂け女やぁ!!」
「違っ…金ちゃん誤解、金ちゃ〜ん!!」

「うわぁぁ千歳助けてぇ〜!」

「え?うわ、口裂け女!」

半泣きの金ちゃんをおぶっていながら軽々と走る千里

「ち、ちょっと待っ…」
しかも風邪のせいで息が続かない


「朝から息切らして大変やな!」
後ろから肩を叩かれる
聞き覚えのある声だ

「ね、ちょっと聞いてよ謙也」
「ギャー!に似とる口裂け女やぁ!!」
「あ…」
何でみんなマスクしてるだけで…



、何や風邪でも引いたんか?」
「移さんといて下さいね」
「蔵リン…光…うわぁん大好き」


「蔵リン言うな!」
「ちゅーか言ったそばからくっつかんといて下さいよ」

「いやぁ朝は眠いなぁ〜…
お、おはようさん〜何や三人で抱き合って〜仲えぇんやなぁ」
「ちゃいます、
この人が好きとか言うて勝手に抱き付いて来たんですわ」
「この人って、その頭やろ?」


白石が小さな声で呟く

「…って言うたらえぇねん」

「は?」



…訳も分からず顔を上げてオサムちゃんを見て一言




『あたし、綺麗?』





「…く、口裂け女!!」











「…ちょっと、笑ってるでしょ」
「え?何が?」

と言いつつ二人共必死に笑いを堪えているのが分かる

「もー!病人で遊ぶな!!」
「マスクしてまで学校来るからやん!」
「くっ…だって皆勤賞…!」

「そんなん欲しいんですか?」
「皆勤賞は受験とかで有利なの!!」
「勉強出来れば問題無いと思いますけど」
「むっ!…財前君?」
「せやからくっつくなて…」
風邪移してやるこのやろう!

マスクしとったから心配しとったばってん…大丈夫そうばいね」

笑いながら戻って来る先程逃走していた男子

「あれ、なんだー千里気付いてたんだ」
「金ちゃんに乗ってあげようと思って」

「で、金ちゃんは?」
「…」


その質問をしたところ急に黙り込んでしまった

「どないしたん、千歳」
「つまり…その、絶対笑わんて約束してくれん?本人真剣で、えーと…」

珍しい、千里が言葉に詰まるなんて

一体何があったんだ?
「笑わないよ(多分)、ね?」
「まぁなぁ、さっき十分笑たし」
「俺、滅多に笑いませんから」

一息つくと金ちゃんの居所を話し出した


「俺と金ちゃんが逃げとったら、
後ろから物凄い勢いで謙也が走って来て、
外に向かおうとしとったから、どこ行くんって聞いたら
コンビニまでべっこう飴買いに行くって言って、金ちゃんも一緒に…」


「私をやっつけるためにべっこう飴買いに行ったの!?
っていうか本気で口裂け女だと思われてるし!」

「あかん、ウケる…!」

結局約束を破った二人
「そこまでボケますか普通」

「だから本人達はあくまでも真剣で…!」

必死にフォローする千里
…それは現状逆効果だ
「あはは!部誌に書こ〜それ」
「白石!」
「これは広めてもえぇボケですって千歳さん」
「財前まで…」
「そして一番の被害者は私です」

「口裂けって呼ぼか」
「却下!」



xxx


「金ちゃん、謙也!朝練始まっとるで、何やっとんねん」
「ちゃうんやて白石、お前見とらんの?ウチの制服着た口裂け女!」
「恐いわ〜!
せやけどべっこう飴買って来たから大丈夫やぁ!ほら見てや〜!」

「…それって、あいつのこと?」

指差した先に居たのは…


「ギャー!!アイツ、ユニフォーム着とる!!金ちゃん、べっこう飴!」
「超ウルトラグレートデリシャス…」
「金ちゃん待ちや!それで投げたらいくらかて瀕死やわ」

ちゃうで、口裂け女やで?」
「よう見てみ」

ばらしてもまだ疑心暗鬼な二人

、マスク取って上げて」
「じゃあ千里ちょっと離れてて、移ったら困るし」
が元気になるんやったら、移してくれた方が」
「ダメ!もう…」

何故か照れながらマスクを取る

「…あり?口裂けてへん」
「せやからやて言うとるやろ」


「うわ…やらかしてもーたー!!財前にバレでもしたら絶対…

「謙也さんてホンマにチキンですね」

とか言われてまう……って、居るし!」


「朝からえぇネタ出来ましたね」
「せやな」


…そう、いつもこんなオチやねん俺…


凹。




「ほら、凹んじゃった」
「それより」
それより?!あれ?さっきまで千里、謙也達側だったよね!?

、顔赤いけど本当に大丈夫?」
「え、赤い?」


そう言うと額に額をくっつける

漫画とかでよく見るけど、
これって本当に熱あるか分かるのかな



「少し熱っぽいかも」
「分かるの?!本当に?」
「熱測った方がよかね、後で行こうか」
「う、うん。すいません何か迷惑かけて」
「気にせんで、が辛い方がよっぽど嫌たい」

「千里…」
なんでほいほいそんなこと言えちゃうんだか


私の心は不整脈続きです(予測出来ないってことを言いたいらしい)


xxx
と言うわけで千里に付き添われ保健室に

「先生、体温計貸して欲しいんですけど…」
「あら、千歳君熱でもあるん?先生がばっちり診てあげ…」
「いや俺じゃなくて、彼女」

私の存在はすっかり千里の背で隠れていた

「…期待外れですみません」
「えぇのよ、今度…ね!」

なに、今度だと!?

「今怒りで熱上がってそう」

「はは、何もなかね」
「…私熱あっても授業出るから」
、絶対いかん!」

「大体熱なんて…」







「どげんしたと?」
「うん、全然平気!平熱だよ」

「体温計貸して」
「やだ」

奪われまいと体温計を後ろに隠す

「…

「さぁ授業授業!先生、体温計有難う御座い…」

一瞬の隙で取られてしまった

あぁぁリセットボタン(?)どここれ…!

体温計を見ながら半笑いで話し出す

の平熱は38度もあるたいね」

「…あはは、高めなんだ〜…さてと」
「じゃなかね」

力づくでベッドに寝かされて必死にもがいたところで
病人が出せる力なんぞ限られたものであり…

「離して!大丈夫だし、何より皆勤賞!!」
「ダメ!…先生、包帯貸して下さい。丸ごと」
「包帯?はい、足りる?」
「多分…あとしっかり抑えとって下さい」

「ち、ちょっと!何!?」

と、何故か先生に抑えられ完全に身動きが取れなくなってしまった
「千歳君はサディストやね」
「え?あはは、そんなこと無いですよ」

…いやこの行動はいくら非常事態とは言えドSだ


「手首冷たいんですけど…」
「こうでもせんと、逃げるから」

結局、一度決めたら絶対諦めない性格のせいで
保健室のベッドに両手縛られるとか
有り得ない状況を体験するはめになってしまった

ベッドのパイプはかなりひんやりしていて
冷え症になりそうだ

「あ、そろそろ行かんと」

こんな非現実的な光景にしたのにも関わらず
平然と時計を見ながら去ろうとする犯人

「逃げませんからこれ解いてくれませんかね」

「絶対解かん」
「嫌だー!ねぇねぇ、皆勤賞なんだよー!?」
…いい加減諦めて欲しかね。
皆勤賞があるかないかで高校決まるんなら、その分勉強教えるし」
「…けど」
皆勤賞と家庭教師…天秤にかけても良いものなのだろうか

「授業中倒れる方が後に残るばいね」
「そうだけど…」
「じゃ、また後でな」
「あっ」

暴れ過ぎて目にかかった私の前髪を直すと
千里は保健室を後にした

「先生〜」
「そうやね、縛ってまで拘束するのは良くないと思うわ」

「えっ?それじゃあ話が早いじゃないですか!」




…しかし運悪く呼び出しの放送が


「あらら、ちょっと待っとってや〜」

「これ解いてから行っ…」



…遅かった




まぁすぐ帰って来るかな…


一時限目の始業チャイムが鳴った


「…休んじゃったし、帰ろうかなぁ」








……







…先生遅くない?!





カーテン閉まってるから何分経ったかも検討付かないし…



ガラッ



お、グッドタイミング!



ところがカーテンを開けたのは…



「恐いわ〜口裂け女が捕まっとる」

「あれ、オサムちゃん!?」


「職員室居ったらの包帯解けぇ言われてなぁ
…そういうことな。さっきは騙されたわ〜!」

「すいません…某部長に言え言われまして…」
「…お返しに写メ撮ったろうかな」
「ギャー!そ、それだけは!!」


「嘘やて!で、誰にやられたんこれ」

包帯を解きながら興味本位で聞かれる

「千歳…」
「あはは!やっぱりなぁ!!アイツ怒らすと恐いからなぁ!」

「…笑い過ぎ」
朝から笑われっぱなしだということに今更気付く

「…手冷たい」

しわっとなってる両手をさすっていると
オサムちゃんも片腕を持ってくれた

「だから人気なんだね〜親父」
「お、親父やない!!大体人気も無いしなぁ、せめてパパにしなさい」
「…やだなオサムちゃんの娘」
頬擦りとかやられたら血が出そうだ
「ん?喧嘩売っとるんか?」

「いたたた!
売ってません売ってません!!そんな強く握んないで!」


xxx

「あら、千歳君。遠目でもイケメンやね」
「先生、大人しくしとった?」
「うーん、
可哀想だからって包帯解こうとしたんだけど私呼び出されちゃってね、
渡邊先生に頼んでおいたんだけど」

「そうですか…どうも!」


xxx
…先生は次の授業の準備とかで保健室まで戻らんし…
「サボろうかなぁ…」

それにしても…

二人いるはずの保健室なのにやけに静かたい…

閉まっている方のカーテンをそっと開けてみる


言葉よりも先にと目が合った

「静かに」と人差し指でジェスチャーされ、
もう片方はオサムちゃんを指差している

「昨日徹夜だったんだって」
「…テストの丸付け?」
「そうみたい」

「ばってん…の腕枕はずるか」

「拗ねるとこそこ!?」
「どっちにしろ次授業だしオサムちゃん、起きね」

寝顔が可愛いかったからもうちょっと見てたかったなぁ
…何て口にでも出したら千里もっと拗ねるかな
「うーん…あ、寝てもーた!?」
「ちょっとだけどね。授業、始まっちゃうよ?」
「あぁしもた!!ほな、帰れるようになったら帰るんやで?
あとちゃんと病院行きや、分かったな?」
「うん、ありがと。オサムちゃん大好き」
「早う元気になってまたマネよろしゅうな♪」
「あはっ、敵わないなぁ」



そう言って頭をニ、三度軽く叩くと
オサムちゃんは足早に去って行った




「一時間目休んじゃったしもう諦めて、帰ろうかと思う」
「そっか。あ…手首大丈夫だったとね?
強引過ぎたかなって、気になっとって」
「ううん、全然大丈夫。
むしろあれくらいしないと本気で逃げてただろうし」

ベッドの近くに置いてあったカバンをさり気なく手渡され
カバンを持ってベッドから出ようとする

「あ」
「っと…」
立ち眩んで倒れ込んできたの体は物凄く熱かった
普通に話しとったから全く気付かなかった。
、熱かなり上がっとーね

「ゴメン、それじゃ…」
「送ってくばい」
「いやいや、授業あるし!」
「こげな体のまま、一人で帰らすことなんて出来るわけなか。背中乗って」
「せ、千…」
「…乗れ」
「すいません!!」
この人時々物凄い恐い…


と言うわけで私の皆勤賞は終わった



xxx


…そう思っていたのだが



「インフルエンザ!?」
「だから公欠なんだー♪」
電話口からでもの喜んでいる姿が目に見える
「そない喜ぶことちゃうやろ!他の部員に移ってたら…」

「皆予防接種したって言ってたよ。
だーからー、一番危ないのオサムちゃん」
「や、ありえへんー!!」



案の定オサムちゃんはインフルエンザを移されることになる




END


>>>コメ。<<<
風邪引いてたので風邪ネタを…(単純発想
色々書いてたら思いの外長くなってしまった(愛故/え



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