***-雨-***
ポタポタとアスファルトは黒く塗り潰され
紫陽花の上にはカタツムリがのたのた前進して居て
大きめの傘を一人くるくると回しながら人気の無い道を歩く


-雨-



雨は激しくなければ嫌いじゃない

雨が上がった後の空気が澄んでるあの感じが一番好きな気がする


それに、人も居ないし

人目を気にするわけでは無いけど


「あ」





そしてふと目についた一組の男女


「…」
ちょっと待て


この状況、バレると非常に気まずい


何せ私は友達の好きな人を盗ってしまったようなものだから…



xxx
あれは冗談半分だった

「あー!今日当てられるんだった、一生のお願い!宿題見せて!!」
の一生は何回あるんだか…ほい、1ページ100万円」
「高っ!シカト」

「し、シカトを予告すんなや!」
「時間無いんだから黙ってて」
「しかも可愛くなっ!」
「うるさいな…」



あれは確か私が国語で当てられる日だった


「はい、一億円。おつりはいならいよ」
「高!まぁ、有り難く貰うわ」
お礼にジュースおごったんだっけ

「謙也って、好きな人居るの?」
「んぐっ!な、何やねん急に」

「あ、焦るってことは居るんだ」
「…居るかもな」

「それって、誰?」
「いやいや、直球過ぎやろ!それで答える奴居ったら相当アホやで」


友達に頼まれたんだよ
謙也に好きな人居るのか聞いてくれって


「この際だから言っちゃいなよ」
「言わんて」
「同じクラス?」
「せやからなぁ…」
「同じ学年?」
「ウザいて、こそ何でそない執拗に絡んで来るん」
「え、別に。意味は無いけど。力になれれば良いなぁって」


「力に…なぁ」

「そうそう、力に」
「せやったら俺の彼女になってや」

「勿論!お安い御用……えぇ!?何?」

「ほらな、せやから言いとうなかったんや」
「それはダメだよ、私の友達が…」
「友達がどうかしたんか?」
「何でもない、けど」


当然のことながら友達の好きな人を盗る訳にはいかないし
元々何とも思って居なかった訳だし



冗談として認識することで特に気まずくもならなかった。

この話は自然にフェードアウトすると思って居た


なのに




「あ、謙也。何してんの?」

その一件から少し経った休日。
犬を散歩している時だった

「イグアナの散歩!可愛いやろ!!マリアーって呼んだって!」

「…嫌だよ気持ち悪い」
「き、気持ち悪いて失礼やろ!コラ、食おうとすな!!」
「うちの犬はそんなん食べませんー!」


「お前飼い主に似んで可愛ぇ顔しとるなぁ!」
「似ないは余計」

「お、マリアと仲良くしてくれるん?良かったなぁマリア〜」
「…マリアマリアって」

でも、うちの犬を可愛がってくれたのが凄い嬉しくて


動物見てる笑顔が目に焼き付いて


「謙也、前にさぁ…」
「ん?」



な、何言おうとしてるんだ私



「ううん、何でも…!」
「はぁ?変やで
「ちょっと謙也の彼女になりたいって思っただけ」

「ふーん…って、彼女!?ちゅーかちょっとかい!」

「けど、友達が好きなんだ。謙也の事」
「俺は友達やなくて、が好きやねん。」
「そ、そう言うことじゃなくて」

「好きな奴盗った盗らないで
友達や無くなるんやったらそれはホンマに友達なんかな」

「えっ」


「俺はそりゃあ凹むやろうけど、友達の関係は友達のままやと思うで」

ふと自問自答してみる

私は一体…どうしたいんだろうと。

この気持ちに対して嫌がっている自分は居るのかと。


自ずと答えは出ていた

「そうなのかも、ね」

「そ、そうなん?俺の友人関係は知らんけど」

「どう反応するか分かんないけど、一目惚れしたみたい」

「一目?今まで顔見られてなかったん?!」
「いや、そう言う意味じゃなくてさ…」


xxx


友達は別の男子と付き合い始めた

私には謙也が居た



言えないまま、噂だけが流れて。
私も友達も話し出そうとしなくて、
距離があっという間に開いてしまって。


「どっちが幸せなんだろう」




?」
とかぶつぶつ考えてると見つかってしまった
「何しとるん、一人で」
「あ…いやぁちょっとぶらついてて」

「謙也君は?」
「さぁ…雨の日は走れないからって外に出ないから…
家でイグアナと戯れてるんじゃないかな」
「そうなんや、あーぁ見たかったわ〜」
「そ、そう?」
「うち、まだ諦めてへんからな」
「俺の立場どないなんねん!凹むやろ〜」
「あはは、嘘嘘。憧れってことにしておく」
何とも思っていない友達を見て
何被害妄想になってるんだ、自分と反省する


「何か勝手に距離置いてた」
「ひどー!とうちの仲やん〜
どうせ玉砕しとったんやし気にしとらんよ〜!」
「ん、本当ゴメン!今度奢るよ」
「高くつくで〜?」
「ま、マジで!?」



xxx


「ってわけで怒って無かったの」

案の定謙也は家でイグアナと戯れていた

「良かったやん!」
「色々すっきりした」

「…で、それわざわざ言いに来たん?」
「まぁ、それもそうなんだけど。楽しそうな二人見てたら顔見たくなって」

「…で、わざわざ会いに来てくれたん?!」
イグアナを戻しながら嬉しそうに問い質す

「まぁ…」

「よし分かった!」
「何が?っていうか急に張り切り出して…」
、こっち来ぃや」

ソファに座っていた謙也が私を呼んだ

「もー、だから何?」
「嬉しいからこうする」
「わっ」

目の前に立って居た
無理矢理抱き締めると
バランスを崩して倒れ込んだ

「つ、潰してしまう」
「潰れへんから、力抜きや」
「…知らないからね」


目が合って
自然に唇を重ねていた




コンコン

「!」


「なぁ兄ちゃん、俺のゲーム知らへん?」
「げ、ゲーム?えーと…居間のテーブルやないかな」
「探してみるわ…姉ちゃん」
「ん?」
「ごゆっくり〜!」




バタン




「どこから聞いとったんやアイツ」
「さ、さぁ…ねぇ…」

こ、このマセガキ!



それは、二人共同じ気持ちだったと思う。


END


>>>コメ。<<<
久々の謙也夢。
シリアスなような、ほのぼのとしているような。
イグアナバカな設定が好きです(笑



>>>モドル<<<
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