***VIRTUAL-GIRL-FRIEND-Vol.14-***
親密になるということは
時として残酷なものだ


VIRTUAL-GIRL-FRIEND-40-



「越前が記憶喪失?」
「…やって」
「コシマエ恐なって逃げたんとちゃう〜?」
「コラ、金ちゃん」
「なぁなぁ白石ぃ!来るまでわい試合やっててもえぇかぁ?!
アイツ強いんやろ〜!!」
ここまで来るともう何言うても聞かんからなぁ

溜め息を吐きながら白石は応えた

「…断られるんがオチやと思うけどな」



「良いよ」


「えっ」

「やろうか、遠山君」


「ホンマかぁ!?なぁ試合してもえぇよな!な!!」

「まぁ、金ちゃんなりの時間稼ぎやな」
「よっしゃー!!」


「あれはただ試合したいだけやと思いますけど」
財前の一言で冷静になって考え直して見る
「…そうかもな」




ところが―

事態は一瞬にして一変する


「金ちゃん!」
「何で!?あ、私も行く!」
「ってちゃん、スカート!スカート!」
「しまった!逆セクハラ勘弁!!」

「逆って…」
普通女子やったら照れるんやないん!?
さんに羞恥心ってモンは無いんですかね」
「ここまで来たらもはや女子っちゅーか…
何者やろあの子…って、今は金ちゃんやな!!」

「…あ、登れない」
「お前もうちょい先のこと考えんとあかんやろ」

オロオロしていると
見兼ねた銀さんが片手で襟を引っ張り上げてくれた


「腹が見える!」
「これはスマンスマン」

「自業自得や、もっと引っ張っても良かったのに」
「蔵…!」
間違っていない分言い返せない!

それより金ちゃんだ

「金ちゃん、金ちゃん大丈夫?」

頬を軽く叩いても応答しない

「大丈夫なわけないやろアーホ」
「しかもに抱かれとるんやったら尚更や〜」

「大丈夫かな、オサムちゃん、救急車呼ぶ?」

「いや、これは多分一時的なモンやろな…
イップスに似たような感じやと思うけど、
まさかここまでの状態にすることが出来るなんてな…」

「とりあえずタオル冷やして来る!タオ…」
持っていたタオルを取られる

「アンタは氷帝のマネやろ、それは私の仕事や」
「あ、そうだった」

「選手でもないのにコートまで行って、ホンマ熱過ぎんねん」
「…」

また言い返せない。

それはやっぱり間違って無いからだ


黙って膝の上にいる金ちゃんを見つめる事しか出来なかった


「…」
ちゅーかアタシ達をシカトするなんて!!




「蔵ノ介、私氷帝に戻る」
「どないしたん急に…気にしたか?」

「マネージャーの仕事まで取っちゃって、でしゃばり過ぎたみたい。
ダメだなぁ、何か夢中になると回り見えなくなるっていうか…」
金ちゃんの頭をゆっくり椅子に乗せながら必死に平気を装って話を続ける

しかし額を汗とは別のものが伝ってしまう


何でか涙が止まらなかった



私はこれまで色々やり過ぎてしまったらしい

なのに居心地良過ぎてそれに気付かない始末

「迷惑って言葉すっかり忘れてた…」
「待っ…!」


無我夢中で走った


だから止めようとされたことにも気付かなかったし

皆が『そんなことない』って怒っていた事にも気付くはずが無かった


「痛っ…」

ガーゼの中に入り込む涙が傷に染みる



泣き顔じゃ戻れない

顔洗うにも洗えない


…また後先考えず行動しちゃった


久々に全力で走ったな…






バシッ!




と、いきなり脳まで振動されるほど叩かれる


「っ…いった〜!!なに!?」



振り向くとそこに居たのは―


「あちこち行くな言うとるやろ」

凄い…いや、物凄〜く怒っている人物が


恐さのあまり涙も痛みもどこかに飛んでしまった

ガーゼには血が滲んでいたけど

それすら何とも感じない

「どっ、ドメスティックバイオレンス…」

しかも何言ってるんだ自分
やっぱり脳に来たかな

「俺がえぇって言うまでは側に居らんとしばくで」


恐喝!?

「こん位言わんと、また走るやろ…

抱き締めながら心配そうに呟いた

「けど…!」


無言で言葉を口で塞ぐ相手


…これ以上言うなっていうか言わせないってことなのかな

「こんな真っ昼間に…!」
「今に始まった事でも無いやろ」

…そんな開き直りって有りですか


「あの、もう逃げないからせめて離してくれませんかね」

「却下」
「え!?」

怒っている分、迂闊に反抗する事も出来なかった




xxx
「もう、ときたら急に走り出したり…忙しなか」

「にしても白石足速いなぁ…」
「いやいや、オサムちゃんが遅過ぎなだけたい」
「嘘やろ!?まだまだ現役…あー無理、もう勘弁!休憩!」

「…おじさんばい」
お陰で白石達見失うし…




仕方無く(行動は良かったばってん)
足手まといなオサムちゃんと木陰で休むことにした



数分後…


「何やっとんねん、二人して」
「おー二人共無事やったか!」
「そう言う二人こそ、一人死にそうだし…
まさか私追いかけて来てくれたとか?」

「…」


「あはは、嫌だな冗談だ…」
「ちゅーか図星かい」

「後先考えんのはどうやらだけじゃなかね」

めちゃめちゃ息が切れている隣りの人を指さしながら応える


「…折角、泣きやんだのになぁ…」
だからこの学校の人達困る


「大変ばい!の顔、血が流れとる」
「え?」


そう言えば…何か頬痛いような…


「あ、思い出した!!痛い痛い!凄い染みて来た!!」

「その時差は演技やな」
「演技じゃないって…
もとはと言えば蔵ノ介が凄い怒って叩いたりするから…」
あんな真っ向で怒られたら誰だって麻痺してしまうよ

「白石が手ぇ出すんやなんて、よっぽどの事やってんな」
「そげな姿、一度見てみたかったとね」


「茶化すなや、必死やったんやから…」

「どうもすみません」

「アイツら皆本心には正直やで〜、
もうちょい自分に自信持ってもえぇんとちゃうか?」

「…」




「あれ、俺今何やあかん事言うたかな」

俯くを心配そうに見るオサムちゃん

「いや、多分大丈夫ばい」



こうして四人は観客席に戻って行ったわけだ

泣き止まないを後押ししながら


「っ…大好きだから…!」

「知っとる」
「最近今更の事実ばっか言うねん、どない思う?」
「ボケとるんとちゃうか?」

やっぱりこんなオチか…



xxx続く


>>>コメ。<<<
そう言えば随分と四天に馴染んでいるなぁと思いこんな話を(意地悪
金ちゃんとゆっきーの下りは絶対入れたかった(聞いてません
もうかなり佳境ですが、高校編とかやる気満々です(笑
物凄い久々に続きアップしました!(10/20)下へスクロール願います。



>>>モドル<<<



意外な人物からの
意外な挑戦状


VIRTUAL-GIRL-FRIEND-41-



「金ちゃん!」

戻って開口一番にそう叫んだ。
金ちゃんが起き上がっていたのだ


ところが不思議そうな顔をしながらこう問い掛ける

「…姉ちゃん誰やぁ?」

「嘘、まさか記憶喪失!?」

愕然とした


「うわ…やっぱ氷帝に戻るべきだった」


肩を落としながら
かなり凹む



「はぁ…」


私の金ちゃん…
(さんの物では無いですよ)





「なぁなぁ謙也ぁ、わいやっぱ嘘はあかんと思うねん」

「せやな…って、俺にふるなや!主犯(アタマ)は財前やん!!」
後輩に罪を着せられる先輩


「さぁ、何のことやか…」
ちゃんちゃうで〜?俺関係あれへんで〜??」

「うん…」


どうやらショックのあまり聞く耳を持っていないようだ



と、一同が驚く結末を迎える


「重…」
!!ちゃうねん、わい覚えとるで!!
うー…せやから…えーと…」

後ろから抱き付きながら不器用に真実を申し出てくれた

だから、つまりそれは嘘じゃないんだなって。

「わ、分かってたよ!?嘘だって!!」

「ホンマに〜?」


「…財前」
「そない睨まんで下さいよ、
そもそもさんが馬鹿正直過ぎなんですよ。
見とったらつい苛めとうなりません?」

反省するどころか同意を求めようとする財前
ホンマ、えぇ度胸やわ

「でもまぁ…確かに弄りたくはなるか」

如何せん、否定出来へん自分も居るわけで。


「う…それより金ちゃん大丈夫?」
「それがなぁ、あんま覚えてへんねん…ただ」



金ちゃんの一言が決して嘘で無い事は分かっているのに
思わず疑わずにはいられなかった

そんな現象、現実に有り得るのか?

…いや、有り得ないでしょう普通



「五感奪われて、テニスしとうなくなるやなんて…
流石の俺かて聞いた事無いで」

「流石のっちゅーか、オサムちゃんやったから聞いて無いんとちゃうん」
「蔵ノ介…!
そんな皆思ってるけど傷付かせないように暗黙の了解にしてる一言を…!」
「…にマイナス3コケシ!」

「うっそ、何で!?」


「やぁいマイナス3コケシ〜」
「べ、別に良いし。
そもそもさぁ、コケシコケシ言ってるけど
皆今累計で何コケシかオサムちゃん把握してるの?」

…!」
「へ?」
わ、私また痛いとこ付いてしまった…?


「どうせ俺はおじさんやで…もう記憶力かて中学生には敵わんしなぁ…」

「あぁぁ、オサムちゃんがナーバスに…」
の空気読めない具合はピカイチやね」
「小春さんも人の事言えませんけどね」

ボソッと光が呟く

「今何て言うた!?」

「何も言うてません〜」

「あ、才気煥発!えー出来ちゃうんだ〜」
「千歳パクられとるやん〜簡単な技ちゃうの〜!?」
…金ちゃん…」
普段温厚な人が一触即発な雰囲気で拳を握り締めていた


「千歳抑えろ!アイツら学年違えどバカ仲間やから」

「む…白石はんの円卓ショットまで…」
「蔵ノ介のテニスは基本に忠実だから真似しやすいんだよ。
ねぇ〜金ちゃ〜ん」
「あはは!真似しやすいんやぁー!!」

…後で絶対シバく…せや、今日は毒手祭りや
えぇ思い出になりそうやな…」
一触即発の雰囲気が宥めていた人物に移る


「まぁまぁ白石落ち着くたい!!
何言っとるのか分からなくなっとーね」


「あー!!わいの山嵐ぃー!!コシマエー!!」

小さくガッツポーズをする三年生約二名


「金ちゃんの技まで出来るとは…越前恐るべし」


…ここに来て何故金ちゃんは冷やかさない…?」
「二人共落ち着き、えらい殺気立っとる…」
止めに入る師範


「ヤキモチでも妬いとるんですか?先輩達」
「妬いとらん!」

…絶対妬いとる

「きぃー!め…!後でひっぱたいてやるっ!」

ふつふつと対抗心を燃やす小春


「あの技や…、アイツ恐いんやー!」
「よしよし、金ちゃん恐がらないで」

にしても凄いテニス…

「あれは可能なものなの?」

返って来る言葉は大体予想が付いたが
一応隣りに居たオサムちゃんに聞いてみる

「いや…普通じゃありえへんやろな…」

「だよね」

「まさに神の子って言うのに相応しいんやろなぁ」
「神…か」


xxx
「やっぱり幸村部長凄いでヤンス〜↑
でも、越前って人羨しいでヤンス〜!」

浦山しい太、立海大附属期待の(?)ルーキー
「誰だろうあの子?真田に喧嘩売ってるとしか…」

「さっき出て来たヒョウ柄の人なんて
幸村部長が相手になるまでも無かったでヤンス〜↑↑」


!アイツめっちゃムカつくんやぁ!!」

「いたたた、金ちゃん落ち着いて!」

「はっはー!えぇやんえぇやん!!金太郎に新たなライバル登場かな」

「ふんぎぃー!絶対来年負かしたるんやぁー!!」


まだ大会終わって無いのに
四天宝寺と立海の間では早くも来年の火花が散っていた


「四天対立海かぁ…見てみたいな。あ、去年戦ったんだっけ」
「負けたけどなぁ」
「蔵ノ介は対戦しなかったんだよね?」
「試合回って来なかったからなぁ…出し惜しみはあかんかったなぁ」
寂しそうにオサムちゃんが呟く

「でももし幸村だったら試合しなくて良かったんじゃないの?ボロ負…」

声の大きさに気付き
急いで口を抑える



トントンと後ろから肩を叩かれる


…振り向けない


絶対振り向けない





?」

耳元に口が来る位の高さに屈みながら妙に優しい声で名前を呼ぶ


危険だ、危険過ぎる

「は…い」


「お前今夜…やからな」


「え、何?」
肝心な所聞き取れなかった…!


「さぁて、最後まで試合見とかんとな」

当然二回も言ってくれるはずも無く。
予想出来ない恐怖と戦う訳だが…

「白石君、あの子青ざめとるけど。何言ったん」
「はは、気のせいや。それより試合や試合」

「まぁ、苦しんでる方がうちは嬉しいけどー♪」



xxx
余談


「蔵ノ介、CD出したの?」
唐突に渡された一枚のCD。

「せやねん、沢山貰たから皆聴いてや〜」

それを忙しそうに配る蔵ノ介

「イケメン侍に真田が居るんだけど千歳は居ないの?
っていうか立海だけ副部長居るし」
「せやったら四天からは千歳やなくてこのイケメン副部長、
小石川健二郎にオファーが」
「無理ですわ」
「無理!?財前、お前そない即答されたら俺凹むやんか!!」
「いや、無理なモンは無理ですから」
「光…その辺にしときなって」


「白石ばっかずるいわ!俺も歌いたい!」
「オサムちゃん…うちの監督羨しがるんならまだ分かるけどさ…」

「とにかく聴いてな」
「うん、聴いとく…蔵ノ介の声分かるかな」
「本気で言っとるん?まぁ、分からんかったら延々と耳元で歌うからな」
「えっ、耳元で?」

…それもちょっと良いな。

そう思う であった



xxx続く


>>>コメ。<<<
…何する気だ蔵リン!(笑)アップする間が空くに空いてしまいCDネタが古くなってしまった…orz
これ書いてた時はCD発売して間も無かったんです(と、言い訳してみる
そして単行本見返したらリョマが出した技の順番とか所々違った…すいません…!(土下座
物凄い久々に続きアップしました!(4/25)下にスクロールするとあります。一区切り…?



>>>モドル<<<




一度始まった事には終わりがあって、
誰もそれを止めることは出来ない。


VIRTUAL-GIRL-FRIEND-42-



「何かもうさ…何でもありだよね今年の大会…」
「確かに…人並外れとって普通みたいなとこあるよな」



こうして、立海大附属を制した青学が優勝、立海が準優勝…


「四天は?」
「いや、ベスト4やろ」
「3位ってこと?」

「まぁ、3位が二校ってことやろな」


えーと、青学とうちが戦って青学勝って、
不動峰と四天宝寺が戦って四天宝寺が勝った…
で、四天宝寺と青学が戦って、青学が勝った。
成徳と立海が戦って、立海が勝った…
「でも、優勝校に負けたんだから私の中では四天が3位だな!
成徳に勝つ自信あるでしょ?」
「ありまくりや!何なら試合申し込んでもえぇで」

「白石ぃ試合するんかぁ!?わいもわいも!!」
「金ちゃん、幸村の技にはもう気にしないの?」

「気にしとるに決まっとるやんー!
せやけどわい、やっぱテニス好きやさかいになぁ!!
な、試合やるんやろー白石ぃー!」
「あぁもう…やらへんて。冗談や、冗談。言う事聞かんのやったら…」

左腕に手を掛ける

「毒手いややぁ〜!!」


「あとは受験か…何か拍子抜けするよね」

「俺達明日帰るから、今は明日までの事だけ考えればえぇねんて」
「うん、そうだよね」


こうして全国大会は幕を閉じた


xxx



その日の夜…


「このホテルとも今日でおさらばかぁ〜。寂しいね、蔵ノ介」
「寂しいな」
「あ、そう言えば昼間!夜…何て言ったの?」
「ん?あぁ、説教な。って」

「説教?!最終日なのに説教するの?!」
がボロ負けとか喧嘩売るからや、
売られた喧嘩は買わなあかんやろ?」
「いや…あれはその、出来心(?)で…」

「正座せぇ」
「うぅっ…」
しかし悪い事を言ってしまったのも事実なので
従うしか無い自分が居るわけで


「床やなくて、そっち」
「ベッド?」
随分と優しいな
(そんなこともないと思いますよ)

「覚悟しときや」
「ひぃ〜…って、あれ?」
何故か説教する張本人が膝を枕にして横になる

「ん?ん〜??」
「…疲れた」
溜め息を吐きながら呟く

「説教は?」
「疲れとるのに、いらんことで気力減らしとう無いわ」
ははーん、なるほどね
「最初からそのつもりだった?」
「どやろ、焦る顔見るの好きやねん、俺」
ただのドSじゃねぇか!!

うとうとしながら同じ方向見て居る蔵ノ介の頭に額を付ける

寝てても良い

ただ一言、御礼が言いたかった

「この何日か、凄い楽しかった。色んな人に会って、色んな事があって。
バカで、破天荒でいっつもフラフラどっか行っちゃう私を
ずっと守ってくれてありがとう


嫌って言われても、例え別れたとしても私やっぱり蔵ノ介が大好きだと思う


小春っぽく言うとー、蔵リン私を離さんといてー!みたいな…」



方向が90度変わった


びっくりするから急な方向転換は止めて頂きたい


あと、唐突にキスするのも…緊張するから止めて頂きたい


「離すわけないやろ、こないオモロい女」

方向を変えたせいで目に前髪がかかっていたが
口元は微笑んでいた


「お、起きてたの」
別に聞かれても良かったけどそれに対して返されると非常に照れる


「全部聞いとったで。
ちゅーか、聞き逃すわけないやろそない大事な言葉」

「あはは…」
「むしろ礼言わなあかんのはこっちの方や」
「えっ」

「俺について来てくれて、ホンマありがとう。」

「蔵ノ介…」

「愛してんで、





「千歳より?」
笑いながら問い掛ける

「意地悪やな、お前」
その問いに笑いながら答える

「さぁ、誰かさんよりはましだと思うけど」
「へぇ、誰やろ?」



と、いきなり起き上がって壁を見る蔵ノ介

「え…第六感?」
「静かに。そない大層なもんやないで…まぁ見とき」


一瞬流れた沈黙と言う名の時間


バンッ




「わ、びっくりした!急に壁叩いてどうしたの?!欲求不満解消!?」
「…虫の退治や、お邪魔虫の」
「お邪魔虫って…」

あれ、もしや会話聞かれてた?


隣りの部屋って確か…

「あぁぁ耳キーンなっとるわ…!」
「謙也騒ぐからバレてもーたやん!」
「それ以前に先公が生徒のプライベート盗み聞いたらあかんやろ!
教育委員会に言うで!」
「まぁまぁ、謙也がこの前教室の花瓶割ったんバラさへんから〜」
「な、何故それを…」
「風の噂や〜♪あーぁ、バレてもーたし部屋戻ーろ」
「ちゅーか勝手に入って来んな!!」


xxx

その日はもう疲れてしまって爆睡していたらしく
気付いた頃にはすっかり日が昇っていた

「朝か…」

そして半径10cm以内には綺麗な顔
…いつ見てもやっぱり綺麗だなぁ

「次はいつ会えるんだろう」
…大阪に行く予定も無いし、勉強しなきゃダメだろうし。
「心配か?」
目は閉じたまま微かに動く口
「わ、お・・・起きてたの!?」
「今やけどな…で?」
「楽しかったから…まぁ、寂しいってだけで」
「はは…心配せんでもまた近々遊びに来るから」
頭を撫でながら優しく呟く
「いや、勉強とかしないとダメだろうし大丈夫大丈夫!」
「別に今から必死に勉強せな進学出来ん程の成績でも無いしな」
く…!そうか、完璧主義がモットーだったこの人

そんな風に悔しがってたのに、時間は止まってくれないらしい
徐に顔を持ち上げながら蔵ノ介はこう言った。

「ギリギリまでこうしてよか」


そう、彼はこういう性格なのだ。


良いよって言わなくてもやるし、
ダメだと言ってもやるし。


けど、今回は嬉しかった。
暫くお預けなわけだから―


xxx


「あーこれで ともおさらばやー!嬉しい★」
「ちきしょー・・・!最後の最後まで!」
「小春、ちゃうやろ」
「ゆ、ユウ君…」

「ん?」
急に態度が変わった小春

「…これ」
「わー可愛い!え、くれるの?」
差し出されたのはデコレートされた綺麗な手鏡
「小春も の事、気に入っとるんかな」
「そうばいね」

「べ、別に のこと好きとかや無いから!!
ただ、今度…大阪来る時は行き付けのお店紹介してあげてもえぇけど」
「ありがと!その時は是非とも宜しくお願いしますー。そうだ!」
一礼をしてカバンの中を探る

「じゃあお礼にこれ、良かったら受け取って!」
それは両思いになれるらしいお守りで…

「私にはもう必要無いから、次は小春がユウジと…」
「うわーえぇの!?これで謙也クンと…!!」
「小春ぅ!ちゃうやろ!?俺やろ!?」
「せやで!ユウジでえぇやん!!それホンマに効きそうやん…!」
必死なユウジと謙也


「せや、 。これ後で訳してみてや、宿題」
ふと差し出された一通の紙には英文がずらっと並んでいる
「えぇ!?マジで?」
「今の状況に合っとるなぁって思て。
えぇ曲やから騙されたと思て聴いてみてや。
あ、対訳見るんは自分で訳してからやで?」
加えて、手渡されたのは1枚のアルバム。
訳が分からずただ貰うだけだった。
「うん、分かった」


一人になった帰り道は何だか物凄い静かで
家に帰ってから一目散に蔵ノ介から貰った
アルバムをかけながら英和辞書を引いて行く

良い曲だけど切ない感じがするのは何でだろう

訳し終わって、対訳と照らし合わせるとその答えが出た。




列車の時間
扉の向こうに立つ君
雨が降りそうだ
永遠に降り続く訳じゃないけど
君の手のぬくもり忘れない
あの頃の僕らはずっとこのまま

ほんの少しの時が僕らを引き離すだけ
すぐに君の笑顔に逢える
君に逢うまでは
愛するということがわからなかった
それが君だったから
もう離さない

僕らの心の時計は同じ速さで進んでいる
愛しい君よ
僕の愛を全て捧げる

出発の時間
あと一言だけ言わせて
僕の「アイノシルシ」は永遠に
わかっていると思うけど

言葉にできないこの気持ち
ただ隣で笑ってくれれば

僕らの心の時計は同じ速さで進んでいる
愛しい君よ
僕の愛を全て捧げる
どうか僕の特別でいて
胸が苦しいけど
束の間の寂しさは一瞬のものだから


必死に訳したノートに一粒、また一粒と涙が零れる所為で
字が滲んで段々読めなくなる

「っていうか、甘過ぎだし…バカ」


xxx
「っくしっ!」
「白石風邪でも引いたと?」
「…いや、引いてへんけど」

”新着メール 1件”

ちゃんと訳した証に撮った写メを見て思わず笑ってしまう

「ははっ」
「どげんしたと?携帯見て笑い出して…」
が号泣し過ぎでな」

ぐちゃぐちゃになったノート用紙


「白石ぃーもうすぐで大阪着くってー!」
「帰って来たんやな」
「そうばいね」


こうして、私の波瀾万丈(?)な中3の夏は幕を閉じた。
そう、幕を…


「え、跡部待って!何U-17って」

全国大会が終わって少し経ったある日、
生徒会長室に呼ばれた私は意味の分からない
話を振られ、困惑していた。


「知るか、逆に俺様が聞きたい位だ。
で、これが今回呼ばれてるリスト・・・」
「いや、有り得ない。中学生が何でそんな選抜に・・・」
「安心しろ、お前の旦那も選ばれてるから」
「そうそう、旦那も・・・って、旦那なんて居ないし!誰の事言ってるんだか」
「誰って、白」
「あー!言わなくて良い!!」
「何今更照れてんだ、あーん?」



・・・どうやらまだ夏は終わらないみたいだ





xxx続く


>>>コメ。<<<
PINKLOOPのLet me tell you one more thingという曲。
和訳見た瞬間「これだ!!」と、使っちゃってます。
勝手に使ってすいません(ここで言われても)出会ったのはもう数年も前の話なんですが笑
本当にこの話のラストに合うなぁと思って、大好きな曲です。:-)
実は終わらせるつもりだったんですが、SQで新連載が始まったのでU-17編書こうかと笑
原作沿いにする為、更新はかなりまったりめですが思い出した頃に覗いてやって下さると喜びます。



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