***a little little "devil"***
また新しい見えない傷を付けて
君は僕の元に帰ってくるんだ


a little little "devil"

その日の待ち合わせの時もそうだった


「また喧嘩?」

本人は傷一つ無い
しかし掌にはうっすら血痕が残っている

「兄貴絡みで…」
「全く、お兄さんもやんちゃし過ぎなんだよ!!
可愛い弟が血に染まって何とも思わないのかしら!!」

手を拭きながら良く分からないキャラになって反発する

、そのキャラめっちゃウザい」
「今は別に良いけど…いや良くないけど、
この先光に何かあったら泣くよ?」

「勝手に泣けばえぇやろ」
特に大事と認識せず、ケロッと返す

…分かってるよ、このキャラがよく似合うってことも



それとは全く違う、180度逆の彼の一面を見たのは
もう少し先の話になるわけだが。


xxx
それから数週間経った日曜日の午後、私は偶然光のお兄さんに会った

「お兄さん!」
友達二人と歩いてきた光兄。
弟が弟なだけあって、兄貴も顔立ちはかなり整っている方だと思う

!今日は一人なんか?」

「そうなんです、ちょっと買い物…
って、それより話したいことがあるんですけど!」
「…い、いきなり鬼のような形相になってどないしたん」

「あまり光を巻き込まないで欲しくて」
「あ、納得。その件な…お前ら先行っててえぇよ」

光兄は友達を先に行かせると立ち話もなんだから
…と、近くのカフェに入った


「好きな物頼んで」
「そうですか?じゃあ…お店一押しのスペシャルパフェを」
「流石光の女…容赦ないな」

「で…そうやな、どこから話せばえぇやろ」
そう言うと腕を組みながらしばし考える

そ、そんな複雑な理由があるのだろうか

とか一人で考えていると、意外な一言を耳にする

「まず…昔色々あったんやけど、それは全部片付いとんねん」
「え、えぇ!?マジですかそれ」
「大マジー。せやけど頭にしか話し付けとらんくて、
俺と対立しとった奴らの後輩っちゅーか、そいつらが光にも絡んどるみたいで」
「なるほど…」

「またあいつ喧嘩弱ないから負けへんやろ?誰に似たんやろか…」
遠くを見つめながらため息を吐く

「いや、お兄さんですって。そこでボケますか普通」

「えぇ?!俺やったんか…!性格は似てへんやろ?」
「マジボケですか、性格は正反対と言っても過言じゃないけど」
お兄さんが太陽だったら、光は月みたいな感じだ。


「あと…これはアイツに口止めされとった話やねんけど」

「い、言って良いんですかそれ」
「構へん!バレたところで俺には勝たれへんし」

財前兄弟って一体…

の事めっちゃ心配なんやて」
「……はい?」
有り得ない言葉が出てきて脳に伝わるまでに時間がかかる

「ほら、良くドラマであるやん!
大切にしとった彼女が悪い奴らに連れて行かれて〜…みたいな」
「あ、ありますけど」

それはあくまでもドラマの話だ、とは突っ込みたかったが、
話の腰を折っても悪いので自分の中に留めておいた

「そない話にもなりかねんって」
「いやいや、なりませんよ〜」
ないないと手を左右に振る

「せやけどなぁ…」
「とにかく光の状況が自己防衛って分かったんで安心しました。
教えてくれて有難う御座います」
「俺もいつかちゃんと話しとかなあかんと思うてたから。
光やったら絶対言わへんやろし」
「引き止めてすいませんでした、
友達待ってるみたいだし私は大丈夫なんで向かって下さい」

「何や慌ただしくてすまんな…払っとくからゆっくり食べとって」
「ごちそうさまです」

小走りで目的地に向かうお兄さんを窓越しに見る
しかし兄弟であの性格の違いは一体…
無口なお父さんと明るいお母さんのDNAが綺麗に分かれたんだろうか…

なんてね


そんなまったり気分でお店を出た直後、
あからさまに不良やってますよ系な人に絡まれる

「なぁなぁ、さっき居った奴と知り合い?」
「…だったら?」

まさか本当になるとは


xxx

「コイツ弟の女やて!」
ドラマでありそうなバーだ…
「こんな場所あるんだ〜…」
「随分肝の据わったやっちゃな」
「あの財前の女やし」
光ってどんだけ強いんだろ

「ねぇねぇ、黙ってついて来てあげたけどこれって、
人質捕っておびき寄せて手出したらコイツの命は〜…とか言うアレ?」
「自分、置かれとる立場分かっとるんか?」
「分かってるよ…はぁ、買い物しようと思ってたのになぁ」
「いや絶対分かってへんやろ!」

光には秘密にしていることがある
…まぁ、いいや。もうちょっと様子を見ようかな
「痛い目遭いとうなかったら携帯貸しや」
「良いけど…痛い目見ても知らないよ?」

そっくりそのまま言葉を返す
それを聞いてそのグループのボス的存在であろう人物が大声で笑い始める
「気に入った!なぁ好きな奴の傷つく姿見とうないやろ?」
「見たくない」
「せやったら俺の女にならへんか」
「ならない」
「な、コイツどんだけ恐い者知らずやねん」
「ははっ!おもろいやんけ、おい携帯」

下っ端的な人から携帯を取り上げて、電話をかけ始めるボス

「何…」
「財前の弟やな?どうも初めまして」
「は?お前誰やねん」

「お前の兄貴に昔先輩が世話になってな…
たまたまえぇモン見つけたから持って来てん」
「まさか」
「頭のえぇ弟クンやったらもうピンと来たかな?」

…うわ、この話し方…光絶対キレてると思う
「…場所は」
込み上げて来る怒りを必死に沈めながら話を続ける財前
「話が早くて楽やわ」





「なぁ、その子どないしたん?」

電話を切って間もなく気の強そうなお姉さんが奥から登場して来た
「財前弟の女やて、お前より肝座っとるわ。」
上機嫌で答えるボス。
年下のくせに自分より上だと言われ、機嫌の悪くなる女。

「痛っ」
髪の毛を鷲掴み、睨みながらに話しかける
「はぁ?こないガキのどこが」
「ちょっと痛いんですけど、おーばーさーん」
「なっ」

「おい待ち…」


止める言葉とほぼ同時にバーに鳴り響いた鈍い音

「年上なめたらこうなるんやから」

口が切れたのか、血が流れたまま床に倒れて動かない

「やり過ぎやろ、ガキ相手に」
「生意気な口訊く方が悪いやろ、痛い目見ないとわからへんねん」

「いったぁ…」
物凄いビンタを食らったのにも関わらず
はケラケラと無邪気に笑いながら起き上がる

「光には内緒にしておこうと思ったんだけどな、嫌われないように」
「何言うてんの・・・」

先ほどとは比べものにならない位とてつもない音が響き渡った
まさかの形勢逆転。

「やられたら倍にしてやり返すけど…文句ないよね」
腕で血を拭きながら床の上で動けないまま見上げている年上に話しかける
「コ、イツ…!」

「おい、止めろ!男相手やったら流石に敵わんやろ!」
「…!」








…な、何やこの状況」

財前が混乱するのも無理はない。
そこには人質を捕ったであろう人達が全員倒れている

…先に兄貴来たんやろか?
いや、せやけどは兄貴の携帯知らんし…
?」

しかもの姿が見当たらない

…ど、どうしよう!!
何て言い訳する?某高校の先生が助けに来てくれたとか…!?
無理無理、あれこそドラマの話だし
でも私が空手やってたことバレたら絶対嫌われるし…!

は物陰に隠れながらどうにかこの場を乗り切れないか
必死に考えていた

と、その時
「ぎゃ…」
「無事やってんな、良かった…」

そう言いながら背中から抱き付く財前。
その声色はいつもと全然違った優しいもので、
一瞬本当に本人なのか?と疑った位だ

…どうしよう、どうしよう。

まだ言い訳が思いつかなくて困っている

「その傷、殴られたん?」
「え!?あ、ケチャップ!!ケチャップ…」
「殴られたんやな」
「…はい」
どうやらその鋭い視線に耐えきれなかった模様。

「痛いやろ?女殴るなんて最低や」
「いや、女に殴られたの…だから、えーと…あの…」

何だかこういう状況になると光って優しいんだなという嬉しさの反面、
申し訳なさが勝ってしまって私はカミングアウトの決意をした

「ごめんなさい!!」
「…は?」

「私実は小さい頃から空手やってて、喧嘩と言うか…力強いんだよね。
でも光って家庭的な子が好きだって言ってたから…
家庭的って何か女の子キャピ★みたいな感じっていうか…!!
華奢で守りたいタイプが好きってことでしょ!?」
「…相変わらずの世界はよう分からんわ」
怒る所か何故か前に回って抱き締め出した光。

「お前が肝据わっとったこと位知っとったし」

若干乾いて来た血を舐めながら返答する

「う、うそ!?」
「嘘やない」
「ホントに!?」
「…それ以上確認するんやったら口の血小板噛み砕くで」
「も、もう確認しません」

「頑張って隠しとったつもりなんやろうけど、バレバレやったで」
「うわ、最低ー。なのに助けに来てくれたの?」
「俺の女やから」

「…ありがと」
優しいって部分のDNAだけは、半分に分かれたんだね

「これからはその強さ、外に出して行った方がえぇかもな。
面倒な事に巻き込まれんですむかもしれへんし」
「良いの?」
「仮に全力出したとしても、俺に勝たれへんやろうし。
せやから隠しとったって部分もあるやろ?」
「確かに…一理あります」
普段の生活を見ていて確信していた。
どう頑張ってもこの人には敵わないだろうって。

肉体的な強さにも、精神的な強さにも。

その帰り道…
「俺が言う家庭的って、家に居てくれればえぇかなぁ位で。
ただ居らんかった日には…まぁそんなとこやけど」
「…の部分が恐ろしいな。
光、それ家庭的って言うかただ単に束縛したいだけなんじゃ…」
「束縛したいわけや無い。必要な時に居ればえぇだけ」
「でもいつか分からないから結局居ないとまずくない?」

「あ…考えてみるとせやな」
「え、本気で気付いてなかったんだ」


これは奥さんになったら大変だな・・・そう思うであった。



END


>>>コメ。<<<
家庭的な子がタイプという事実を本当に疑っているサイトです笑
いつもの如く寡黙な弟を持つ兄貴はきっと明るい設定ですb(どんな設定ですか)
最近お兄さん率高めだなぁ(好きなんだもの…!)



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