***天邪鬼***
『可愛くない』は最高の褒め言葉だ


天邪鬼

曇り空の朝

健康状態は至って良好


なのに私は平日の街中を一人で歩いていた。
一般的に今の私はこう呼ばれるのだろう

"ズル休み"



平日は良いなぁ、人が少なくて。

時々同年代の子を見つけては
『あの子もサボリかな』
なんて自己中な事を思いながら、
ふと時計を見るとちょうど二時間目が終わる時刻を指していた


「たまには良いよね…」
呟いた後に気付く
自分勝手な休みは
『たまに』では無いことに


別に悪ぶっていたいわけではない
ただ真面目に毎日学校に行くことが嫌だってだけで―

「面白い事起きないかな、事件とか」


なんて願ったところで刑事ドラマじゃあるまいし
起こるはずもなく私は何も考えずまた歩き始める




「も―」
「またサボり?」

数秒震えた後で取った携帯に出た矢先、
電話に出る際の決まり文句も言えず、
いきなり相手に用件を告げられる始末

「そっちこそ…今三時間目なのにどうして電話出来るの?」
「あ…それは」
痛い所をつかれ、強気だった話し方とは一転言葉に詰まっている

「珍しいね、曇りの日にサボるなんて」
が居らんから」
「…」
今度はこちらが言葉に詰まる

「どうせ街中でも彷徨いとるんやろ?平日は人少ないから」
更に状況をピンポイントで当てられ若干テンパる
「わ、ワンパターンですいませんね」

「それにしても暇ばい…早退しようかな」
「いやいや、だったら授業出れば良いじゃん!」
って、私が言える立場ではないけど…
「走るの嫌だし」

そっか、三時間目体育だっけ。
ん?待てよ…
「運動部なのにその発言はおかしくない?!」
「ばってん陸上部に入っとるわけやなかね、俺がやりたいのはテニス」
「あ、そっか…」

休日は人で埋まっている街中のベンチも今日はガラガラだ

座ってそんな他愛もない会話をしながら
これからどうしようかなぁと考える

一人でノープランのまま出掛ける事ほど楽なことはない
逆に言えば、ネタが尽きると困るわけだが

「さて、そろそろ戻るかな」
「今から戻ったら…
時間微妙だね、もしかすると欠席扱いされるよ?」
「最初からそのつもりたい、それに」
「それに…











今まさに私の眼前で
事件が起こっている




それは思いもよらない、全く展開の読めなかった事件だ



手に力が入らず、通話中のまま耳から離れて行く携帯


…あ、夢?」




目の前の人物は
既に必要のない通話を切らずに中途半端になっていた話を終わらせる

「携帯、もう要らんから」

持っていた携帯をしまいながら
の視界で手を上下に動かす
、生きとる?」
「たった今死んだ」
「そっか」

彼女の安否を確認すると、空いていた隣に腰を下ろした

「それにしてもまさか向かっていたとは…」
「驚いたと?」
「驚いてない!!わ、分かってたし…」
「素直じゃなかね」
「こういう性格なの。
っていうか鞄が無いってことは…抜け出して来たの?」
「まぁな。
教室戻る時にバレたら出れなくなるから裏山から真っ直ぐ出て来て…」
「別にそこまでしなくても」
休んどるってことは明日まで会えんやろ?
そう考えたら電話だけじゃ物足りなくなって」

クスクス


「な、何ね」
「いや…千里のそういうとこ好きだなぁって」
「?」
どこだろう

「あー、探さなくて良いから!ほら、三時間目終わるよ」

腕を引っ張りベンチから無理矢理立たせ、
背中を軽く押す


振り返って千歳が尋ねる

「あれ、途中まで送ってくれたりとか…」
「休んでる身だからなぁ…安全な場所までね」

本当サバサバしとるな、って

「何?」
「いや、何でもなか」


学校は目と鼻の先だ
10分も歩けば到着してしまう

即ち、それよりも前に別れなければいけないわけで。


八分目辺りでは足を止めた
通学路でも流石にこの時間は人が居ない

「それじゃあ、この辺で」
「しっかり授業受けんとな、二人分」
「そ、そうだね」
サボった日のノート写させて貰うのは日常茶飯事…
二人分と言う言葉は確実に嫌味だ


学校方面に歩いて行く姿を確認した後、
自分も帰ろうともと来た道を辿ろうとした

!」


「ビックリした…」
今度はさっきとは違う種類のビックリなんだろう
と考えながら呼ばれた先を見る

「受け取って!」
「受け取る?何を―」

まだ言ってる途中だったのにも関わらず
千歳から投げられて来た物をキャッチする

手の中に入っていた物は…

「何これ?」
「鍵」
「そんなの見れば分かるよ!何の鍵?!」

「家!」
「家ってまたアバウトな…一体誰ん家の…」
「ノート貸す代わりに留守番しとって!じゃ!!」
「留守…留守番!?え、嘘これ千里の家の鍵!?」
相手は後ろ姿のままただ手を振っているだけで

「…留守に人を入れることが出来るなんて、
よっぽど自信あるんだなぁ…」
鍵を握り締め、変更された目的地に向かいながらふと思う。

ましてや彼女!!
もしかして家の中詮索されたらどうしよう!
とか思わないのかな

…思わないから鍵渡せるんだろうけど

それ以前に私自身
他人の物をどうこうしようなんて面倒だし探さないけど



…そんな私が鍵を開け
真っ先にしたことと言えば、
勝手にベッドを借りて昼寝だったわけで。



xxx
いつもの癖でつい鍵を探してしまう
「そっか、鍵貸しとったんだっけ」

ドアを開けて中に入ったものの、
あまりにも静か過ぎて人の気配が感じられない

「まぁ、ん事やから多分…」


少しだけドアが開いている寝室
案の定千歳の読みは当たっていた

「全く…こぎゃん爆睡しとったら留守番の意味なかね」

大きな枕に顔半分埋もれているの寝顔を見ながら呟く

「さて、どげんしようかな………あ、空き巣!」


寝ていてもどうやら役目は忘れて居らず、
"空き巣"と言う言葉に反応して勢い良く飛び起きる
「空き巣!?うわ、爆睡してた…千里空き巣は!?」

そこには顔を布団で隠しながら笑いを堪える千歳の姿が

「千里!空き巣は?」
「あはは、居らんよ。留守番が寝とったらいかんばい」
「す、すいません…」
寝癖を直しながら謝る

「鍵もう一つ作っておかんとな」
「そう…え?」
それってもしかして合い鍵ってやつ?!

「ん?何か面白かったと?」
「そんな…
面白い時だけしか笑わないわけじゃないよ。
単純に嬉しかっただけ」

素直に喜ぶの表情はそれこそ可愛かったわけだが、
可愛いと言う言葉を嫌う相手にその気持ちを伝えることは出来ず

「へぇ、珍しい」

と、普通に返す

「私可愛くないから」
今度は意地悪い笑みを浮かべは話す
「本当、可愛くないな」
それに対し、否定すると怒るしな…と
仕方なさそうなイントネーションで返す千歳

「なぁ…可愛いって言われるんそげん嫌?」
「嫌っていうか…苦手だから可愛くないって言ってるだけ。
こんなにサバサバしてるから、リアクションに困る」


「…それだけ?」
目線は合わせず
恥ずかしそうにコクリと頷く
その姿を見て思わず本音が出てしまう

「やっぱ可愛い」


腕の中のは何も言い返さず黙っていた






END


>>>コメ。<<<
何だか一番中学生らしいと言うか無邪気な千歳のような気がしました:-)
ツンデレな彼女。平日の街中は大好物ですb(聞いてませんけど)



>>>モドル<<<
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送