***trypanosome***
ケラケラ笑う虚偽の姿


trypanosome


メールを送信して間もなく、
息を切らしながら彼女は家に入って来た


青ざめた表情をしながら近付き、顔色を確認する

「大丈夫?どうしたの!?死ぬかもって!!」


俯いていた彼は顔を上げると、ニコリと笑って彼女に囁く

「そぎゃんメール、送ってなかとよ?」

突拍子も無い一言に呆気に取られながらも突っ込む。
「え・・・今更そんな嘘吐かれても困るんですけど」

そういえばさっきから何かがおかしい。
家の中の空気、そして目の前にいる彼の行動。


彼女は辺りを見回すと、テーブルの上にとんでもない物があった事に気付いた。

「焼酎!?焼酎だよねこれ」

電気に翳しながら中身を確認すると、既に空っぽ。

「空?ま、まさか飲んだの!?」
「足りなか、ちょっと買って来て」
「あぁ、うん了解・・・って、だだだダメに決まってるでしょ!?未成年!!」
「未成年?九州男児に焼酎は付きモンたい!」

ここで彼女は全てを悟った。


この子、酔っ払ってるんだ


と。


「こ・・・こんなダラダラしてるの千里じゃない」


涙を浮かべながら
目の前に居る彼氏のギャップを必死に受け止めようとするも
それは困難を極めた。

「酔っ払ったら感情の抑制が出来なくなるって言うけど・・・」
「もう離さんからな」
「違う・・・こんなの絶対違う・・・」

怒られたり優しくなられたり、一緒に居るこっちが疲れる

「水・・・そうだ、とりあえず水飲みなよ」

肩に乗っていた腕を無理矢理離して冷蔵庫からミネラルウォーターを持って来ると
今度はうるうるした目で一点を見つめている

「はい、水」

ペットボトルを手渡すものの、持ったまま飲もうとしてくれない

「千里、水飲んで!」
私、この短い時間で水って何回言ったんだろう

「やだ」
「やだ!?やだって何!?」
「これ、酒じゃなか」
「駄々捏ねない!ほら、飲め早く!!」

遂にキレた彼女は、無理矢理ボトルを口に突っ込んだ

「・・・ケホッ」
「あ、ゴメン変な所入っちゃった?」

背中を擦りながら我に返る

?」
「なに」
「どの俺が一番好き?」
「えっ」
ん事好いとるから、俺に満足しとるのか不安で不安で・・・」

それで色んな感情を出してた?
いやいや、酔っ払ってるんだからそんな計算出来るはず無いだろうし。

まぁ所詮酔っ払いの一言だ、醒める頃にはきっと何もかも忘れているだろう
「私はいつもの千里が一番好きなんだよ。だからそのままで良い
これ以上優しくされたり、束縛されたり、強気になられたりしても何か全部違うっていうか」

あー・・・これは素面の時絶対言えないな



そしてまた俯いたまま動かなくなってしまった彼。

ひょっとして、寝ちゃった?


髪と髪の間から少しだけ見える口元が微かに動いた
ケラケラと笑いながら呟く

『酔わせてあげる』


「だから、酔ってるのは千里なんだっ―」



飲んでも居ないのに口の中に広がる焼酎の味



・・・


静かに、ゆっくりと時間が過ぎて行く気がして



それにしても、今度こそ本当に寝ちゃったんじゃ

そんな事を本気で思っていた矢先、また彼は口を開いた

「酔った?」
「・・・そうですね、強いて言えばあなたに酔ってますけど」
「そう」

それを聞いて瓶を持ち上げると、満足そうに話し始めた
「こん位の量じゃ、我を忘れる程酔えなかね」


「な・・・何を強がり言っちゃって」
と言うか酔って無かったら・・・
「そぎゃん疑っとるんやったら、証拠見せようか」
「証拠?どうやって」

「明日になっても全部覚えてればよかやってことばいね?」

この一言で私は全てを察知した。
最初から全部演技だったんだ、酔っていたのは嘘・・・。

「いや、もう分かった・・・っす。大丈夫なら私はこれで・・・」


「最初に言うとったやろ?『離さん』って」

ギュッと抱き締めながら再び囁いた
少し前の発言もしっかりと覚えている。



これは、非常にまずい展開だ


「私の中に入り込んで侵蝕していく悪い虫め」
「え!恐い虫も居るたいね」


もう良いです




END


>>>コメ。<<<
酔っ払いもどきネタです笑
でも本気で酔っ払って甘えられたりされても良いbb(聞いてませんけど
ちなみにトリパノソーマは寄生虫の一種です(恐)
辞書見てたら出て来て響きが気に入ったのでタイトルに。



>>>モドル<<<
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