***バケトン***
何処にも行きたくない、だから僕は何処にも行かない
何処にも行きたくないんだ、でも行かなきゃいけない
だから時間をとめてくれないか?
すべてをとめてくれないか?

バケトン

「じゃあまた明日、学校で」


きっと聞こえてないだろう

最近の私と来たらいつもこの調子だ

あの笑顔に甘えてしまいそうになるから

わざと姿が見えない時に独り言のように別れを告げ家を去る







「・・・?」



バスタオルを頭に被せ髪を乾かしながら居間に戻ると
そこに居た筈の彼女の姿は見当たらない


「またか」


そんな理由なんて知らない本人は
この現実を悪い方へ悪い方へと考えてしまう


”嫌われたのかな”




・・・
遠くまで響く足音
ある一定の間隔で灯っているオレンジ色したライト


夜のトンネルは不気味だと思う


・・・昼間より長くなってるんじゃない?

なんて有り得ない事を考えながら早歩きでトンネル内を歩く


コツコツコツ・・・


「・・・」

足音が増え
無意識に自分も歩幅を広める


すると



・・・あ、相手も速くなってるのは気のせい!?



全速力で走ろうとしたその時だった

「ぎゃ・・・!?」


叫ぼうとしたの口を腕で塞ぎながら
背後から抱き付くもう一つの足音


髪が濡れているのか、勢いで顔に水滴が飛び散った


、何で俺が居らん間に帰ると?」

聞き覚えのある優しい声が頭の中に響く
静かに腕を離しながら問い掛けられた疑問にゆっくりと答えようとする

「追いかけて来ないでよ!!ビックリした・・・」
「す、すまん・・・ここら辺最近物騒やから、心配になって」

「私なら大丈夫だし、それにそんな濡れたままで来て風邪引くでしょ!?」
「俺ん事は別にどうでも」
「良くない!!千里の辛い顔なんて見たくないし」

「兄ちゃん達、この辺は物騒やから早う帰った方がえぇで」
「あ、すいません。今帰ろうとしてて・・・」
このトンネル内にもう一人居たなんて
全く気付かなかった

が話の聞こえる方向に顔を向けると
そこには
”いかにも怪しい人です”と言わんばかりのおじさんが立っていた

全身黒尽くめの上深く被った帽子

・・・いやいや、人は見掛けによらないよ
今だってこうやって心配してくれてるわけだし

「とりあえず家まで送るたい」
「え!?良いよ、本当・・・」
「それやったらおじさんそっちの方向やから、一緒に行こか」
「いえあの、大丈夫なんで」
「えぇからえぇから!」

無理矢理の手を引っ張り、出口へ向かおうとする謎のおじさん

「ちょっと、止めて貰えませんか」

そんな勝手な事許す訳が無く、手を離そうとする千歳

「最近の男は何やへらへらしとって
まるで男らしさっちゅーもんが無いねんな」

おじさんがそう言うのも無理は無い
・・・だって、千里笑顔のままだし。そりゃあ言われても仕方が無い


「通報しますよ」
「それは困るわ〜」

”通報”という言葉に反応したのか
ポケットからナイフを取り出し、いきなり言葉が乱暴になった

紛れも無い、この人こそ最近話題になっていた不審者だ

「早く警察に・・・!」

携帯を開き電話を掛ける

「危ないから下がっとって」
「危ないって、千里も危ない!
あ、もしもし警察ですか!?あの今・・・」


現場の状況を説明をしようとしたまさにその時
私はとんでもない光景を目の当たりにした


一瞬の出来事

トンネル内に鈍い音が響き渡った

「い・・・一本背負い・・・」

「大丈夫ですか?状況話せますか?」

放心状態になってしまったの携帯を取ると
代わりに千歳が電話を続ける

「えぇ、ちょっと不審者に襲われたというか・・・
あ、そうです。トンネルの・・・」

状況を説明し終わった千歳が電話を切りに返す

、大丈夫?」
「え、あ・・・えぇ!?大丈夫じゃない」
「大変ばい!どこか怪我したと?」
「違う、違う・・・どういうことだ・・・せ、千里って柔道やってたんだっけ」

何とも間の抜けた質問だと自分でもそう思う

「いや、やっとらんよ」
「じゃあ何で、そんな強い・・・」
「父さんに『大切な人を守れん奴は男や無い』って、ずっと教えられとって」
「お父さん陶芸家でしょ!?」
「強い陶芸家が居っても別によかやろ?」

さ、流石九州男児と言いますか・・・
「千里がそんな強いなんて知らなかった」
「知らん方が良かったとね、元々喧嘩とか好きや無いし」

「でも嬉しかった、ありがとう」
「当然の事しただけ・・・っくし!」
「ほら、だから風邪引くって言ったじゃん」
「確かに、後先考えんで行動するのはあまり良くなかね」

顔を見合わせながら笑っていると、パトカーが到着し
私達は事情聴取の為、一緒に警察署へと向かった

どうやら先に聴取を終えた千里は
タオルを貸して貰えたらしく
白いタオルを片手に待合室で私待ってくれていた


「待っててくれたんだ」
「また不審者に会っても困るしな」
「シャレになんないよ、それ」
「あはは、確かに」

お礼をしながらタオルを返すと、私達は警察署を後にした


「そういえば、さっきの質問」

ふと、思い出したかのように尋ねる

「・・・千里の顔見たく無いから」

それに対し端的に答える


「えっ!?それってどげんこつね!?
やっぱり俺ん事嫌いだったと?」
「あぁっそういう意味じゃなくて!
顔見ると、帰りたくなくなるから・・・
私どうやら人と別れる時が一番苦手らしいんだ」


ポケットに入れていた手を出して
の小さな手を握り締める

「じゃあ離れなければよか」

前を見据えたまま、千歳はそう返す


「あ、私の家こっち・・・」
「だから?」
「だからって・・・千歳さん、そんな可愛く首傾げられても」
「俺ん家はあっち」

元来た道を今度は二人でまた歩く

「良かった」



そう呟いて




END


>>>コメ。<<<
普段温厚なくせして実は強いって言うアレですbb(どれですか
千歳夢にお風呂上りが多いのは大好物だからです爆(マテ
バケトンはとある小説のタイトルです。
オバケトンネルの略なんですが、恐いです。夜に見ると眠れません笑
冒頭文はGood4Nothingの曲より。



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