***虹***
気休めくらいになれば良いよ
道に迷って引き返して
時間だけ過ぎて行くけど…



放課後。部活真っ最中。
そんな中現れた一人の女子。

それはイコール否応にも注目されてしまうわけで
物陰に隠れつつこっそりと彼を確認しているわけで。


―部活抜け出しちゃって来てみちゃったけど
抜け出して良かったなぁ〜!


惚気のような物でもあり。


そうこう考えているうちに
ガン見していたのが効いたのか
ケンカ売ってるのかと思われたのか
いずれにせよ、相手に気付かれてしまった



フェンス越しに見えていた姿が段々と大きくなり。



目線を合わせた上で一言。



「部活は?」

「…抜けて来ちゃった」

やれやれと言う困り顔で質問を具体化する
「どげんして?」

恐る恐る会話を返してみる
「部活している姿を見たくなりまして…
ほら、部長だってたまにはサボりたくなるからね!!でー…」

一生懸命言葉を探すものの
なかなか繋がってくれない文章を腹立たしく思った

新しい言い訳を必死に考えているところに
こちらの部長さんまで登場。
ギャラリーの方々に殴られませんかね、私。

「あー、部長がサボっとるー」
「えぇやんか別にー!」
「何や、も遂に関西デビューしたんかいな」
「ううん、今のはノリで。良いから戻って!私の事は忘れて」

「ドラマのヒロインみたいな口調やな」
「そうばいね」

あ、笑われた。ちきしょう。

も戻らなあかんやろ?」
「いや、戻るよ。戻りますー」
部長から部長にそんな助言されたら納得する外無いだろう

「それじゃあ帰りに」
「ち、ちょっと待ってちーやん!!」


ちーやん?



「俺?」


しまった、つい昔の友達の呼び方を…!!
「コホン。千歳君、耳貸して、耳」
「よかよ、何ね?」












クスっ


「え、何で笑うんだよー」
「いやぁ、そげなことなら普通に言っとーて構わんのに」

「だって大声で断られたら立ち直れる自信が無いもん
せからしか!!とかさ…」
拗ねつつ答える

「断る理由がなかばいね、もっと自分自身に自信持ってよかたい
大体せからしかは普段使わんし」


十分過ぎるアドバイスだなぁ


そう言い放って千歳は手を振りつつコートに戻って行った
私も仕方なしに、自分の持ち場に戻ることにした。



xxx

何やって?」
「ん?いや別に。家に遊びに行っても良い?って聞かれとーだけ」

「千歳一人暮しやったよな?」
「うん」
「襲ったらあかんで〜」
「白石!」

「ハハッ、冗談やて冗談!ムキになるんは好きな証拠やな!!」
「まぁそう言うことになるばいね」


xxx


部活終了。
ともなると辺りはすっかり暗くなってしまう。
尤も、今日はまだ薄暗いうちに帰れるのが救いだが。


「おじゃましまーっす。」
「ちらかっとーけど適当に避けて座っちゃって」
「うん、どうぞお構いなく…」

って、全然散らかってないんですけど
避ける物すらない…

「何、飲む?って言っても水かお茶かコーヒー位しか無いけど」
「えと、えとー…じゃあお茶下さい。」
あー畏まっちゃってる。
しかし飲み物のチョイスは何とも千歳らしいなぁ。
ピッタリ!みたいな…って、何考えてるんだろ


と、ソファに座って待ってるとふと目に入って来た物。


物凄いファンシーなカップ。









千歳が使う…わけないと思いたいけど
そう思わないと最悪のパターンに辿り着くし…




他のことを考えようとするものの
どこかそのカップが引っ掛かるわけで。


うーん。







コトッ





はい、どうぞ


「あ、あぁ…ありがとー…」
気付かれないように千歳のカップを見ると
全然ファンシーな物じゃなくて
(むしろ逆と言えるような真っ黒のカップ)


「ご、ゴメン。勝手にソファ座っちゃって」
「全然大丈夫たい。寛いどって構わんよ」

テーブル越しに私と千歳。
どうせなら隣に来ても良いのにー何て思ったりして


「ん?」

「あは!何でも無いよ!!」
目合っちゃった



「ちょっとシャワー入ってきてもよか?」
「うん!どうぞどうぞ!!ごゆっくり!」
何で私こんなに焦ってるんだろうか…
「じゃあ魚のエサやり頼んどー…」
「良いよ良いよ!!エサどこ?」

私自身キッチンカウンターに居る
熱帯魚見たかったから丁度良かったかも。
って、千歳の話を相殺しちゃったけど…



ふと千歳の方を見てみるとそこには笑っている姿とエサが。
そして無言で差し出して行ってしまった…

結局カップの謎は分からないし
初めて来た彼氏の家でエサ持って一人取り残されてるし…

こう言うまったりした時間好きだけどさぁ〜。
気に病む。


でも熱帯魚って見てると吸い込まれると言うか
魅力的と言うか。幻想的?
確か育てるの凄い大変じゃなかったっけ。
あまり詳しく知らないから分からないけど





頬杖付いて熱帯魚とにらめっこをすること数十分。
ペタペタと段々足音が近付いて来た。


その音で現実に戻された感があったような気もした

しかし中3であんなにYシャツの似合う人は珍しいと思う



「どうも日課になっとーみたいで落ち着かなくて」
「ううん!むしろ押し掛けちゃった私が悪いし」
・・・間。





「あ、じゃあそろそろ帰ります!
いやぁ〜本当急にごっめーんって言うか!!
エサもあげといたよ!もうバッチリー…あははは」
―何故微妙なテンションでこんなにテンパってるんだろう



一つの空間で一定の距離感。



今日お邪魔した理由があるでしょ!!
それ言わないと帰れないって!

と、必死に頭の中で自分を励ます
’帰る’と言うフレーズを自分で出しておいて思い出した
家まで来た本当の理由―

「あ…のね」

それを悟ったのか千歳は真顔で話す内容を聞き始めた
笑みが一切無くなった顔が未だに見慣れない―

私は下を向いたままソファに座りながら話す覚悟を決めた

「友達の話だから私は本人の口から聞いたことしか信じないけど
この前千歳と女の子が一緒に歩いてる姿を見たらしく…」


「あぁ!この前って先週の日曜じゃなかと?」

何でそんなに明るく喋られるんだろうか…
「うん…確か日曜日」


会話に温度差が感じられる。


「見られとったんばいねー。」


うっそ!?事実かよっ!


「ちなみにそこにある水玉のカップは…」
「そうそう。ミユキが時々遊びに来るから置いとるたい」




あれ、こう言う状況ってこんなアットホームな感じだっけ?




「写真も確かそこに…」
「ちょっとタイム!」
言えば分かるのに動揺して手でTのジェスチャーまでしてしまった

「ミユキちゃんと仲良いんだよね?」
「仲良いって言うより地元に居た時は毎日一緒だったとや
まぁ…世間的には仲良ー見えとってもおかしくはなかかなぁ。」




ボスッ


現状が掴めない。



思いっきりソファに倒れ込んだ




ミユキって誰?九州の女?
しかもここまで遊びに来るってどんだけ仲良しなんだ!


うぅ…
悲しくなってきた



帰りたい…けど今顔上げたら確実に涙が落ちる



そうだ
楽しい事考えよう楽しい事!楽しい…
このソファふかふかだなぁ〜!!―うん。








やだもん。拗ねるもん。シカト。



、顔上げんと無理矢理起こすばってんよかばいね」


前言撤回。
とりあえず頭を横に振っておこう。

よかないです。でも泣き顔見られたくなかとです。


溜息が聞こえたかと思ったら足音が遠ざかって行った





バタン


カランコロンカランコロン

外から聞こえてくる下駄の音


え?ちょっと、ちょっとちょっと。千歳さん?


どこ行ったんだろう?嫌気がさした?


仕方が無いので顔を上げて涙を拭いた
あーぁ。ぶっさいくな顔してるんだろうな…




ぐすっ。





この間に帰って泥棒とか入っても困るしなぁ・・・
千歳帰ってくるまではいないとまずいよね




約15分間、微動だにせずただソファに座って
ボーっとしていた。

心の中は完全に無の状態だったと思う


時は金なり’なのに、勿体無い―




その反面、精神状態はだいぶ安定したけれども。








ガチャッ




!」

「おかえり」
「これ!」


「?」
満面の笑みで差し出されたのは四角い箱

「開けるの?」
その問いに無言で頷く千歳




「あ…」

「それはの!」


前に一回だけ欲しいって言ったことあったけど
その時聞き流してたと思ってたのに…

「覚えててくれたんだ」
ヤバっ。
折角まぶたの腫れ治まってきてたのに…
しかも嬉しいけどさっきの事は未解決だから
微妙な心境だよ、物凄い

「意味わっかんないよ…」
「カップ無かったのが不満だったんじゃなかとね?」

普通に話そうと必死に横隔膜を説得する
「そ、う言う話の…前にミユキちゃん、好き…だよね?」

「好いとーよ!自分の妹ばいね、嫌いなわけなか!!」

「いっ…」







う…うっそー?









ポカッ


「どぎゃんして叩くとー」

「バカ、大っ嫌い」
知らぬ間に千歳の胸を借りていた自分が居たわけで。

「なして!?」
「修飾語が足りないんだよ!!も〜〜〜っ!わぁぁん!!」
こんなに千歳を困らせたのは始めてだ
人前で泣きじゃくったのも久しぶりだけど


修飾語が足りないと言う一言でピンと来たのか
私とは対称的に上から笑い声が。


「そっか。そうばいね!足りんかったかも。」

そう言うと腕の中に押し付けられてしまった





…って言うか足りなさ過ぎ!





加えて、最後に囁いた



一言、 『ゴメン』 と。






「良いよ、前言撤回する。だから離さないで」
泣きっ面を一生懸命笑い顔に変えて言った

「ん。分かっとー。」
「…ねぇ、何でそんなに笑ってられるの?」

「そげないつも笑っとる?」
「うん。口角は上がってるよ割りと」
若干考えた面持ちだったけどすぐに答えを出した


「幸せだからかな」


あまりにも率直な答えに涙腺も止まってしまった

「答えになっとらん?」

「いや、大丈夫です…」

「な、座ってもよか?」
思えばこの間、ずっと立っていたわけで。
その質問に無言で頷く

ずっとくっ付いてたから離れると少し寒く感じる
ソファの上に並んで座っている二人


「そうだ、ご飯食べて行く?」
「え、そんな悪いよ!」
「一人分も二人分も大した変わらんし」
「そうだなぁー…ん?」

眼下には話し相手…私今膝枕してる!?

「たまにはこげな感じで甘えてもよかね?」
「…う。良いよ、ここでよければ。」
―照れる…。
「あっ、髪濡れたまま出かけた?」
「…急いでて。」
「風邪引くよー!」
ブツブツと小言を言いながら
近くにかけてあったタオルで髪を拭く
このパーマって地毛?とか思いつつ

急がせた理由は私にあるんだけど。



「千歳、だいぶ乾いたよ」





あれっ寝ちゃった??



目瞑ってる姿なんて初めて見た…
むしろこんなにまじまじと千歳の顔見た事無いな

憎たらしい程肌も綺麗だし…頬抓ってやろうか!



すりすり


うわ、すべっすべ!!(立場逆転してませんか)
気持ち良いなぁこんだけすべすべだと。


すりすり


パチッ


「あ…寝ちゃってた?」


ドキ―ッ!!

「ひゃーすいません!!」
―ひゃーって何だ私。動揺し過ぎだろ

「さてと、作るかな」
顔触られてたのに怒らないんだ…人間が出来てる

「何ね?」
呆然と千歳の顔を見入ってたことが不審に思われた模様

「見惚れてました…」
これ以外の言葉が見当たらない

「見惚れる程の男じゃなかとよ」



キッチンに向かう後姿をまた呆然と見ていた自分がいた。
見惚れられる人程そう言うんだ…
勉強出来るのに出来ないって言う人と同じでさ。






でも実際はそうなんだよ。






---
積み重ねた思い出とか
音を立てて崩れたって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける










END




コメ。

と言うわけでちーやん。
ユセやんと妄想したネタもいれつつ。笑
イメージソングはエルレの虹。意味は違うんだけど。
確かメンバーへの歌だったかなぁ。
ちーやんの料理が食べ隊(マテ)こんな優しかったら死ぬ(死ね
ヒロイン設定は基本的に標準語です。
千歳はどこまで博多弁使えば良いんだろうか(悩



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