***枯れたい花***
気がつかなかった
私はあの人にとってそんな存在だったってことを


枯れたい花


ある日、体育の授業での出来事だ。

「千歳君めっちゃかっこえぇ〜!」
「ほら、余所見してるといざと言う時逃げられないよ?」

そんなことお構いなしに男子の授業、
『バスケ』に夢中な千歳ファン。


だが授業中なんだからそれなりに罰を与えられる人も出て来る

「ちょっと、横横!!」
「え?」




ボカッ!



余所見していたがために
避けれたはずのボールもクリーンヒットする結果になる



「あーぁ、言わんこっちゃない…」
「…完全にのびとるな」
「誰か運んでくれるひ―」



そんな最中、丁度試合を終えた彼女の憧れの人が
ユニフォームを脱ぎながら目の前に現れる

「大丈夫?俺運んで行くばい」
「いや、でも授業が」

「倒れとる人見たら助けんと。授業は後からでもやり直せるし」


そう言い残して千歳は保健室に彼女を運びに行ったわけだ。

誰かが動く前に動く

出来そうで出来ないことをそつなくこなせるのも
彼の人気の一つなんだろう


しかし


この日常良くある話には続きがあった。




「ん…」
「あ、気がついた?」

「ここは…?」
「保健室。ボール当たって倒れたばいね、運んで来た」
「千歳君が!?」

コクリと頷いて微笑む。

こんなに嬉しい事は無いだろう
憧れの人がわざわざ運んで来てくれたんだから


「それより大丈夫?」
「だ、大丈夫。ありがとう」
「はは、礼を言われるような事しとらんよ。それじゃ…?」

帰ろうとする腕を掴んで一言物を申す


「折角二人きりなんだから私もっと千歳君の傍に居たい」
「どげんして?寂しいん?」

ビックリした面持ちで聞き返す

「私、千歳君の事がずっと好きだった」
「…!」





こう言うことは度々あった。

正直苦手だった
自分に対して特別な想いを抱いてくれているのに
断らなければいけないから―

そして問題はこの先からの展開だ。


「ばってん、俺には好きな人が居るとね」
「千歳君になら私何されたって良い!
2番目でも3番目でも何番目でも良いから傍において欲しいの」

「…」



カーテン越しに
プリントを持つ手を震わせて
授業終わりのチャイムが鳴ったとほぼ同時に来た私は
どうして良いのか分からなかった。

要するに自分はリアルタイムで
好きな人が浮気するかどうかの瀬戸際を聞いてるわけだ。

あの子可愛いしなぁ。迫られたら勝ち目ないよ、私。

「なぁ、っちガード固いって噂立っとるし。
私やったらガードなんてせぇへんから、お願い。」

私女子の間でガード固いとか噂になってるの!?
そっか、全然知らなかった。


「その噂、間違っとるよ。」
「え?」


思わず声を殺しながら自分も驚く


それは絶望的だった私にとって
千里の一言はあまりにも意外だったからだ

「俺がを大事にしたいから手ぇ出さんだけばい。
ガード固いとかそげな悪口、流さんで欲しかね」

「・・・」

沈黙の時間が流れた。
けど物凄い嬉しかった。


「むしろ固いのは俺の方かもしれんな」
「千歳君が…?」
悲しい目をしながら見上げる

「俺ん中で2番目とか3番目とか無いから
…本当に悪いけど。」
「それじゃあ今のままで十分ってことで
自分の物にしてしまいたいって言う願望は無いの?」

「愛を確かめ合う方法はそれだけじゃなかね」




ドキドキ


どどどどうしよう、心臓の音聞こえてそうだよ私。
この人真面目にタメなの?!
千里は一体何で確かめようと・・・


「最終的には行きつく所に行きつくやろ?」
「最後を引っ張るから楽しくなることもあると思っとーね、
今は唇合わせとるだけで十分ばい」


あーもう…これ以上言われたら心臓が・・・
私出ようかな…今更だけど

「千歳君、絶対中学生や無いな。どっしり構え過ぎや」
「たまにはこげな中学生居ってもよかやろ?」

笑いながらそう答える


「敵わんわ〜!!もう頭ん中整理してから戻る」
その声は脱力感の塊だったようにも取れた
「先生に言っとくばい。ゆっくり休んでな」

「そう言う優しい言葉言われるともっと好きになるから止めてー」

「すまん・・・あれ」



さっきまで確かに先生は居らんかった
なのにどげんしてプリントが?


ふとある会話を思い出した


『私今度保健委員なんだよね』


まさか―




ガラッ



ドアを開けて長い廊下を見渡す
右、左・・・必死に人を追った。
ばってん肝心の本人は見つからない



には聞かれとらんかったんかな


良かったような、聞いて欲しかったような



「あー、見付けたでぇ〜!!
何やっとんねん、隠れんの下手やで!モゴモゴ」
「金ちゃん、しーっ!!」

!」

「ど、どーもー…ぐ、偶然だねぇ」
「偶然なんてそげな嘘、通用すると思っとーね?」
いつもとは珍しく目を鋭くさせながらこちらを見据える

「ごめんなさい、盗み聞きをしたかったわけじゃ…」
「俺今日部室の鍵持っとるばいね、部室まで来れる?」
「お、怒らないのであれば…」
何を言われるか分かったもんじゃない。




けど足は確実に部室との距離を狭める



カチャッ



「…」



無言でドアが閉まる
一体何を…

「すまん、聞きとうない事ペラペラと。」


開口一番に発せられた言葉は拍子抜けする程
優しい一言だった

抱き込みながら目を合わせる
あ、やっぱ嘘隠せない目してるな

―私と同じ目だ。

嘘になると極端に不器用になる
普段は何でも出来るくせに


「そんな不器用な千里が大好きです!
あはは、なんちゃって…って、」
しまった、嬉し過ぎて思わず口に…!!


恐る恐る上を見ると
目を見開いてこちらを見ている

場違いな発言をしてしまったことに対して
不甲斐なさを感じずにはいられない


「ご、ごめん!!その、何か嘘吐くの苦手そうな目が
私と一緒だと思ったら嬉しくて、も申し訳御座いません」
あぁ、ダメ人間…!!どもってるし畏まってるし…

「あはは、動揺しとる」
「動揺だってしたくなるよ!笑うなー!」

動揺を隠せない苛立ちから頬を思い切り引っ張る
「悪かったって、参った参った」

まるで子供をあやすかのように宥められる
ムカつくことにこう言う説得も得意らしい

その言葉に頬を掴んでいた両手は無気力になる


急に大人しくなったな

「…楽しみは最後に取っておくって?」
「ダメ?」
いやいや!そんなうるうるした目で聞き返されたら
ダメじゃないとしか言い様が…

クスっと笑って
どうにも反論出来ない私の髪を指に絡めながら話を続ける

「さっきみたいに迫られたん初めての事で、
どう接すれば良いのか全然分からなかった」

そりゃあなかなか体験出来ないだろう

「ばってん、俺だって誰でも良いわけじゃなくて」
うんうん。まぁ、この人には選択肢沢山あるんだろうな


絡めていた指を解いて抱き締めながらそっと呟く



以外、嫌」




「…」
会話どころか動けない
胸張って言える、絶対オーバーヒートしてる。

今ならドライアイスすら平気な気がする


「だから大事にしとるつもりたい」


声を振り絞って発言を試みる
「千里さん…一旦ストップ」

首を傾げながらもとりあえず黙る

その間、心拍数やら体温やらを正常値まで落ち着かせる



2分後



「よし、ちょっと落ち着いた。戻ろうか」
「ところで首にある赤い痕って虫刺され?」
2分しかなくても場合によっては色々な視点で物を見れる
「そうなの!物凄い痒くて!!あーもう忘れてたのに!」
「そげなとこ刺されたら勘違いすったい」
「へ?何と?」





しまった



聞き返した後に気付いてももう後の祭だ





xxx
ー!さっきの続きしよやぁー!!」
「金ちゃん!あのね、別に遊んでたわけじゃなくて…」
「あれ〜?虫刺され増えとんでぇ!大丈夫かいなぁ?」
「え!?ホントだ!いやぁ全く今年はついてないやぁっはっは」
ここはもう笑うしかない


「校内で虫刺されなぁ…」
「白石疑心暗鬼になっとるばいね」
「はは、滅多に出ぇへん虫が出たからビックリしただけや」
「1個も2個もさほど変わらんと思ったけど、やっぱ変わるか」
「せやな、ましてや首は危険やろ。首は。」




とりあえず髪は伸ばしていよう
あと挑発には気を付けよう

そんな学習もした一日


END



コメ。

何番目でも良いから千歳の傍に居たいって思ってる人は沢山いるはず…!!
と思い書いてみた物で御座います。
正直ヒロインが羨まs(強制終了
千歳が時々見せる甘えてるっぽい一言が好きです(聞いてません



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